フリーランス保護新法チェックリスト
▶︎フリーランス保護新法に抵触する可能性が高い業界や案件
フリーランス保護新法の概要が確認できたところで、自分の仕事に関する状況も確認しておきましょう。以下のチェックリストは、現状の商習慣等で、新法に抵触する可能性が高い案件・業種などを確認できますので参考にしてみてください。
注意が必要な案件・業種チェックリスト
契約内容が不明確な案件 | |
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口約束での仕事 | フリーランス保護新法施行以後は、フリーランスに口頭で発注することはできないので、そうした慣習となっている場合は是正が必要 |
報酬体系が不明確な案件 | 報酬体系が不明確な案件については注意。募集段階から条件を明示する・確認するようにする |
著作権に関する規定が不明確な案件 | 著作権に関する規定が不明確な案件については注意。契約締結の際に必ず確認するようにする |
ハラスメントが発生しやすい案件 | |
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クライアントとの直接的なやり取りが多い案件 | クライアントから直接依頼される案件は条件面で高待遇なことが多いが、一方でハラスメントは発生しやすいので注意。 |
納期が厳しく、長時間労働が求められる案件 | 納期が短い案件、長時間の作業が必要な案件などは注意。発注の段階で無理のないスケジュールを設定するよう心がける。 |
支払い遅延のリスクが高い業界 | |
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ゲーム業界 | ゲーム開発では、開発期間が長期にわたるため、中間報酬の支払いが遅延したり、完成後のロイヤリティの支払いが大幅に遅れるケースもあるので注意 |
映像業界 | 映像制作では、制作費の支払いが分割されることが多く、最終的な支払いまで時間がかかることがあるので注意 |
Web業界 | 記事コンテンツ制作などは、出版と異なり締め切りが明確にないため、修正が繰り返され納品完了とならないケース、実際の納品日でなく公開日を起点に計算されるケースなどが多いので注意 |
出版業界 | 印税の支払いなどが数ヶ月後になることが一般的。また、特に書籍系は原稿料も、納品日ベースではなく、書籍発売後という慣例があるので注意 |
その他 | |
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業務範囲が曖昧な案件 | 業務範囲が曖昧な案件は注意。発注書を発行する段階で業務内容を明確にしておく。 |
再委託が頻繁に行われる案件 | 再委託が頻繁に行われる案件は注意。元請け、下請け、孫請け等、それぞれの段階で条件面をすり合わせておくことが必要。 |
上記に挙げた他にも、フリーランスにとって不都合な条件となりやすい案件は多くあります。これを機会に自分の業務条件・業務環境を見直しておきましょう。
クリエイターが取るべきアクション
▶フリーランス側がすべきこと
フリーランスがまずしなければいけないことは、フリーランス保護新法の内容をしっかりと把握しておくことです。その上で、信頼関係を築けているクライアントの委託案件で、問題がありそうなものがあれば、発注方法、支払期日、報酬体系、修正回数などについて見直しや条件のすり合わせを打診してみましょう。
また、雇用関係に近い業務となっていないか見直すことも重要です。時間拘束や出社義務など、時間や場所に拘束がかかる業務内容は、業務委託の条件に則していません。契約書では問題がなくても、担当者が理解していないケースもあります。メール・チャットのやり取りなどで、雇用関係に近い指示が出た場合などは丁寧に説明するのが最善の方法です。もし、現状言い出しにくい関係で仕事をしている場合は、トラブルが発生した際に備えて作業記録を取っておきましょう。
また、収入がそれなりに安定している場合は、クリエイター向けの団体・協会に所属することも、自分を守る上で役立ちます。年会費等が必要になりますが、法的なサポートや同業者とネットワークが作れることは、心強いでしょう。
▶発注・クライアント側がすべきこと
発注側・受託側の両方がフリーランス保護新法に合わせて、発注方法や支払期日などを見直す機会を設けられるのが理想的ではあります。しかし、フリーランス側から、契約条件の改善を積極的に要求することは、現実的に難しいケースも多くあると考えられます。まだ何も対策を打ち出していない企業の担当者は、法務部・人事部・経理部など関係部署と連携し、早急に11月以降の具体的な対応策・社内体制の整備を進めること強くお勧めします。現状は完全に対応が難しい部分もあるかもしれませんが、本法律を遵守することは、フリーランスの労働環境改善だけでなく、近年マーケティングで重要視される「企業の社会的責任(CSR)」を果たしていく上でも重要なものであることを理解することが大切です。
▶トラブルが起こってしまった場合
公正取引委員会の特設サイトでは、トラブルが発生した際の相談窓口は「フリーランス・トラブル110番」であると案内されています。
ただ、フリーランスに関してのトラブルが増えているので、フリーランス110番での相談も予約するのに数日待つ状況が続いています。弁護士に直接相談できる点がメリットですが、そのサポートにも制限がありますので、その点は留意しておきましょう。その他にも、法的なトラブルに関しての公的なサービスが存在します。これについては、別記事にて詳しく解説する予定です。
まとめ
フリーランス保護新法が施行されても「どうせ今までとそんなに変わらないでしょ」と思われる方もいるかもしれません。しかし、この法律には罰則規定が定められています。数の多さから考えて、すぐに摘発されることはないと思われますが、悪質な業者が見せしめ的に摘発されてから対応するのでは手遅れです。発注側の担当者は、フリーランス保護新法についてよくわからないといった上長の方などにも、本記事なども活用してもらって周知いただければと思います。
また、フリーランスという働き方を選択した方々も、フリーランス保護新法の施行を機会に、しっかりと自分の立場を守れるような環境づくりを改めて模索していきましょう。フリーランスという働き方を利用して政府・行政・企業など雇用の流動性を高めていきたいといった思惑があった上での新法かもしれませんが、それを活かせるかどうかは、私たちフリーランスが主体的に新法を享受していこうとする姿勢にあるのかもしれません。
2024.09.13 Fri