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作業が捗る!クリエイティブワークが楽になる作業効率化「Tips」

2024.08.15 Thu

アーティスト向けソーシャルプラットフォームに注目!

不正AI学習から作品を守る話題のSNS「Cara」とは

文・画像:塚本建未

ここ最近、生成AI に対するアーティスト・クリエイターの批判や抵抗が、徐々に実を結びつつあります。EUでは、AIに関しての包括的な規制法案が検討されており、特に生成AIを「高リスクAI」に分類して厳格な規制を課すことが検討されています。一方、アメリカでは連邦政府レベルでの規制はまだ成立していませんが、個々の州議会や連邦機関などから生成AIを規制する法案を提出する動きが活発になったり、生成AIに関するガイドラインを策定する動きが出ています。さらに生成AIに関する法的な規制は、アメリカ大統領選でも大きな争点となっており、その動向にも注目が集まっています。加えて、OECD(経済協力開発機構)やG7などをはじめとした国際機関でも国際的な生成AIに関する法的規制の必要性も議論されはじめています。

そうした流れの中で、生成AIからアーティストを守るソーシャルプラットフォーム&ポートフォリオサービスである「Cara」というサービスが話題になっています。そこで今回は「Cara」の特徴と実際の使い勝手について紹介していきたいと思います。
※参照記事:AI規制に大統領令で先手(米国)(日本貿易振興機構)

にわかに注目を集める「Cara」とは

Caraのトップページ

Caraはアーティストやアート愛好家、アートファンのためのソーシャルメディアサービスで、アーティストにとってはポートフォリオとしての機能を持ち合わせたツールです。最大の特徴は、生成AIツールからAIを保護すると明確に宣言したSNSであるという点で、そうした姿勢が評価され創作に携わる人々が数多く参加するようになりました。現在はオープンベータ版が提供されており、サービスの理念に賛同した方は誰でもアカウントを作成できます。

Caraの創設者はデザイナーの張静娜氏で、プログラマーやエンジニア、AI研究者と協力してプロジェクトを運営しています。設立の経緯や、運営プロジェクトチームのプロフィールなどは、Caraの「linktr.ee(リンクツリー)」から公式の該当ページや各SNSアカウントのリンクがまとまっていますので、興味のある方はチェックしてみてください。

利用環境はWebブラウザから利用できるWeb版の他、iOS版、Android OS版も提供されており、マルチプラットフォームサービスです。

各プラットフォームへのリンク

プラットフォーム URL
Web版 Web版公式ページ
iOS版 App Storeのページ
Android版 Google Playのページ
新規アカウントは「Sign up」から
メールアドレス、Google、Appleアカウントでアカウント作成

基本的には英語のサービスですが、新規アカウントやログインはメールアドレスとパスワードでの方式以外に、GoogleアカウントもしくはAppleアカウントの方式も用意されていますので、簡単に使い始めることができる点も魅力です。

「Cara」の特徴とアーティストにとっての利点

1.アーティストやクリエイターを生成AIから守るSNS

投稿の際にも生成AIを投稿しないように警告される

生成AIから保護するシステムに関しては、アメリカ合衆国・シカゴ大学のSAND Labという研究開発チームが開発・運営するGlazeプロジェクトと連携しています。Glazeは、作品に目立たないノイズを追加しAIに作品を誤認識させることで、学習データとして取り込まさせないようにするシステムです。Glazeの仕組みについては本連載の過去記事「画像生成AI学習防止ツール「emamori」と「Glaze」でクリエイターの権利を守る(後編)」でも紹介していますので、そちらを参照ください。

技術的には、このGlazeとの連携により生成AIより作品を保護していますが、それ以外にも投稿の際に生成AI画像は投稿しないように警告されるなど、随所に生成AIからアーティストを守ろうとするスタンスが伺えるのも頼もしいポイントです。

2.AIからの保護による画像の劣化は少ない

 

あくまで感覚的で個人的な感想になりますが、Glaze本体のサービスを利用するよりも画像のノイズが目立たないように感じます。また、画像を投稿すると保護処理がかかりますが、それにかかる時間もGlaze本体よりも短く感じました。少なくとも、Glazeの利用を検討している人は、Caraを経由して利用したほうが使い勝手が良いと言っても問題ないと感じました。

「Cara」の基本的な機能

CaraにはSNSとしての機能と、ポートフォリオとしての機能の両方が搭載されています。SNSとしての機能やUIは、X(旧Twitter)、Threads、BlueskyといったSNSに似ています。投稿に「いいね」したり、リポストすることが可能です。また、アカウントのフォローもアカウントのプロフィールをクリックして右上に表示される「Follow」ボタンから可能です。その他、Caraに搭載された基本的な機能について以下に紹介します。

1.ホーム機能

ホーム機能

ホーム機能は、X(旧Twitter)のタイムラインにあたるホームフィード機能です。投稿で流れてくるフォロー・フォロワーによる投稿の割合をカスタマイズできるなど、自分の思い描く投稿表示内容にタイムラインを調整することが可能になっています。

2.エクスプロアー機能

エクスプロアー機能

エクスプロアー機能は、お気に入りのアーティストやクリエイターを見つけられる機能です。最近投稿したアーティストや、フォロワーやいいねの傾向から、おすすめのアーティストが表示されるので、自分のお気に入りのアーティストに出会う確率が高まります。

3.ブログ機能

ブログ機能

Caraにはブログ機能が搭載されているので、長文のテキストを投稿することも可能です。英語ができるアーティストやクリエイターは、海外へ情報発信するのに役立てることもできそうです。

4.ジョブ機能

ジョブ機能

Caraにはアーティストやクリエイター向けの人材募集を投稿できる求人掲示板機能が搭載されています。現在はほぼ海外の案件のみの投稿になっていますが、日本でのユーザーが増えれば日本企業からの求人募集も掲載される可能性もあります。また、海外の企業・個人から仕事を請け負いたいといった場合も、案件を見つけるチャンスが広がっているコミュニティになっています。

4.メッセージ機能 

メッセージ機能

Caraにはメッセージ機能も搭載されています。モバイルアプリでも利用できるので、アーティスト仲間やアートファンとの日常的なコミュニケーションにも役立ちそうです。

実際に「Cara」を使ってみた感想と使い勝手

個人的な見解になりますが、これまでいろいろなSNSを使ってみた中で使い勝手を含めた感想をお伝えしておきます。Glazeを使えるようになるまでのプロセスがなかなかハードルが高かったため、Caraについてもアカウント作成までが大変かと思っていましたが、Googleアカウントで登録したところ、非常に簡単に利用をスタートできました。

英語のサービスではありますが、ブラウザの翻訳機能を使えば、英語が苦手な人も十分に使いこなすことができると思います。使い勝手も、他のSNSの良いところどりといった印象で、X(旧Twitter)やThreadsのような手軽さ、InstagramやBlueskyのようなビジュアルで見せていく機能、NoteやMediumのようなブログ投稿機能、PixivやXfolioのようなポートフォリオ機能、さらには英語ではありますがWantedlyやYOUTRUSTのようなキャリアSNS機能も搭載されており、機能面も充実しています。

一番大きな特徴であるGlazeと連携した生成AIからの保護機能に関しても、Glazeを使うより簡単に画像を保護できるので、使い勝手もかなり良い印象です。保護された画質に関しても、無料プランのGlazeよりも保護用の模様が薄く目立たない印象があります。

アーティスト向けのソーシャルプラットフォームは、国内サービスも充実しており、ThreadsやBlueskyもかなりアーティスト向けの機能が充実しているので、改めて新しいSNSを始める必要性は少ないですが、それらに満足できていない方や、生成AIから自分の作品を保護したい方、海外にチャンスを求める方などにはおすすめできるサービスだと思いました。

まとめ

生成AIに対してモヤモヤした感情を抱える日々はまだまだ続きそうですが、Caraのように生成AIからアーティストやクリエイターの作品を保護しようといった考えやサービスが各地で広まっていることは、創作を生業にする人々にとって希望の光であるように思います。日本国内においても世論調査で約6割の人々が「規制を強化すべき」と回答するといったデータも報告されており、多くの人々が生成AIに関する技術は便利なだけでなく、様々なリスクを抱えるものであると捉え始めているようです。
※参照記事:「生成AI」偽情報と規制 “規制強化すべき”61% (NHK NEWS WEB)

Caraが魅力的なのは、そうした生成AIからアーティスト・クリエイターを保護するサービスであるといった部分を意識しなくても、ソーシャルプラットフォームとして便利で楽しいツールである点かと思います。いろいろなSNSが登場する度にアカウントを作成するのは、少し面倒に感じるかもしれませんが、Caraとの相性の良さを感じる人も少なくないでしょう。本記事で興味を持った方は、ぜひ登録してみてください!

著者プロフィール

塚本 建未
ライター・編集者・イラストレーター
フリーランスのライター・編集者・イラストレーター。高校はデザイン科を卒業し、大学は、文学部とスポーツ科学部の2つの学部を卒業。フィットネス・トレーニング関連の専門誌で編集者・ライターとしてキャリアを積む。メインの活動の場をWebメディアに移行してからは、ITツール紹介やWebマーケティング分野などを得意領域として活動を続けている。
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