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作業が捗る!クリエイティブワークが楽になる作業効率化「Tips」

2024.08.29 Thu

ストレスフリーな環境作りにこそ生成AIの活用を!

交渉などで言いにくいことも上手にまとめてくれる
生成AIのメール活用術と最新トピックス

文・画像:塚本建未


Chat GPTやGeminiをはじめとした生成AIが広く使われだしてから約1年半が過ぎようとしています。多くのクリエイターにとって生成AIとは、不正な学習による著作権侵害やフェイク画像といった倫理面の問題を抱える画像生成AIのイメージが強く、忌み嫌う存在であるかもしれません。その一方で、生成AIの技術を応用した商品・サービスの開発・普及は急速に進み、すでに私たちの仕事や生活の様々な側面で活用されています。

そんな中で、不正な画像生成AIの問題とチャット生成AIなどのテキストベースの生成AIは、切り離して考えるということもクリエイターには必要になってきているように思います。生成AI技術をパンドラの箱に戻すことは不可能です。一度広まってしまった技術の負の側面ばかりを追っていては、箱の底にある希望に気づかないまま時間が過ぎていくだけではないでしょうか。

そこで今回は、仕事や権利を奪うものとして生成AIを捉えることは一旦置いておいて、少し視点を変えて最新の生成AIに関するトピックを紹介したいと思います。

現代はストレス社会であると言われていますが、感情を持たないAIはストレスフリーな作業環境を構築するのにも役立ちます。本稿では、メンタル的に負担のかかるタスクこそ生成AIを利用して効率化することを推奨するともに、チャット生成AIの最新情報をお届けします。

生成AIを使ったメンタルコントロールとは

生成AIの登場は産業革命に匹敵するインパクトを持った技術革命であるといった論説はよく目にしますが、内閣府や総務省は ダボス会議のUSB白書 でまとめられた報告を基にAIやIoTが牽引するビジネスシーンの変化を第4次産業革命であると捉えたレポートをまとめています。この第4次産業革命は、IT技術やインターネットの普及によって始まった第3次産業革命に続く、デスクワークを中心とするホワイトカラー業種の作業領域に大きく影響を与える変化であるとされています。
※参照PDF:第4次産業革命がもたらす 変革(総務省)
※参照URL:第1節 第4次産業革命のインパクト(内閣府)

この生成AIがもたらすインパクトは「肉体労働の産業革命」に対して「頭脳労働の産業革命」であると多くの有識者は捉えています。この「頭脳労働の産業革命」に加えて、「感情労働」という対人関係が中心となる業務においても「産業革命」が起きているというのが本記事でお伝えしたいことです。

総務省、内閣府の資料を参照して作成したイメージ図

営業職、接客業、小売業、医療、介護、教育といった他者とコミュニケーションが業務の中心となる職種は、対人関係のストレスを感じやすい現場です。一方で、顧客満足度、従業員のモチベーション向上、コンプライアンスなどが重要視されるようになり、こうした感情労働の重要性が増しています。しかし、こうした対人関係業務がメインとなる業種の多くは恒常的な人手不足にあり、従業員へのメンタルヘルスサポートの必要性も問われています。そこで、にわかに注目を集めているのが、従業員や顧客の感情コントロールにチャット生成AIの技術を活用していくといった動向です。例えば、カスタマーハラスメント対応でクレームをAIで「怖くない声」に変換といった活用が、コールセンターで取り入られれるといった報道がありました。
※参照URL:クレーム電話、AIで「怖くない声」に ソフトバンクがカスハラ対策(朝日新聞)
※参照URL:生成AIがリアルタイムで声や話し方変換 カスハラ対策にも活用か(ANNnewsCH)

これらの事例で興味深いのはカスタマー対応をAIに行わせるのではなく、カスタマーのクレームをAIでマイルドな声色に変換して、コールセンタースタッフの精神的な負荷を下げているといった点です。カスタマーの怒りの感情それ自体は受け取りつつも、直接その感情をスタッフが受け取ることなく、相手方の伝えたいことのみを情報として受け取れるように生成AIが活用されているのです。こうした生成AIを使った感情のコントロールは、今後広まっていくでしょう。

メールの文面作りで見るチャット生成AI活用事例

ストレスを感じるコミュニケーションは、クリエイターにとっても避けては通れません。特にフリーランスにとっては、クライアント企業や顧客との関係性の中で立場も弱く、自身の意見も伝えにくいといった部分に大きなストレスを感じている人も多いと思います。営業活動、報酬単価・作業スケジュールといった交渉、契約内容の締結に至るまでの条件面のすり合わせ、担当者との意見の相違など、思った以上に対人関係にストレスを感じている人は多いでしょう。また企業で働いている人も、上司や部下とのやり取り、顧客との折衝などで精神的に負荷がかかっているケースがあると思います。そこで、クリエイターが取り入れていくべき生成AI活用法の一例として、私がメールの文章作成でチャット生成AIを活用している事例を紹介します。ここからはメンタル的にかなり楽になる方法を解説したいと思います。

▶︎利用する生成AIモデルとツール
メール文章の作成には、複数の言語モデルを利用して、それらの回答を比較検討した上で最適なものを選択し、微調整するといったプロセスを踏むのが最適のように感じます。思うような回答を得られない場合、あれこれ思案して再度プロンプトを書き換えて指示するより、他のチャット生成AIに尋ねてみたほうが早いです。

私はGoogle Chromeのアドオンである「Chat Hub」という拡張機能を使って、同時に複数の言語モデルから回答を得ています。無料版の「Chat Hub」は同時回答が2つまでという制限がありますが、Chromeを使っている方はインストールしておくと便利です。また「Chat Hub」で利用できるチャット生成AIは、一部利用回数等に制限があるものの無料で利用できるツールなので、各サービスの本体でアカウントを作成しておくと「Chat Hub」を起動するだけで、複数の生成AIへ簡単にアクセスできます。

Chat Hubを使うと複数のチャット生成から同時に回答を得られる
Geminiは3つの回答案を提示する本体を使うのがおすすめ

ただ、Geminiに関しては一つの質問に対して3つの回答を出力してくれますので、Chat Hubを使わずGemini本体で質問しています。また、CopilotもCopilot本体、BingのCopilot、Skypeで利用できるCopilotでは、それぞれ回答が異なるため状況に応じてそれらも使い分けています。

注意点としては、メールの文章作成であったとしてもプロンプトなどに機密情報や個人情報などは入力しないように気をつけましょう。相手方の企業名や担当者名などは入れないか、もしくは「◯◯」「▢▢」といったダミーに変換しておくようにします。

▶︎ケーススタディ1:報酬関連の交渉
報酬の価格交渉は、人によっては最も神経をすり減らす作業であるかもしれません。特に日本では、お金のことを話題にするのを嫌う人も少なくないので、依頼したい内容だけを伝えられて、こちらから聞かなければ条件面を伝えてもらえないこともしばしばです。私の場合は、報酬額はしっかり伝えられるようになってきたのですが、交通費などの諸経費については、なかなか強く主張することができません。今回は、こうしたケースを想定して、メール文章を生成してみましょう。

プロンプトとして提示した文章
まず、プロンプトになる文章を作成します。ここでは、自分の感情を思い切りぶつけたメール文面にすることがポイントです。しっかりと自分の感情を表現することで得られるカタルシス効果を経て、それをビジネスメールにふさわしい文面に転換していきましょう。

ケーススタディ1:プロンプトとして提示した文章

「完全リモートということで業務を請け負いましたが、キックオフミーティングというのは業務の一環ですよね。それであれば、ミーティングでの時間給と貴社までの交通費も費用として提示すべきなのではないでしょうか?もしそれが難しければ、今回の件は辞退させていただきたいです!」

この文章を、相手方に失礼のない文面になおした上で、なおかつこちらの主張が伝わるビジネスメールに置き換えてください。

回答例1

ケーススタディ1:Geminiの回答例

私は、最初に回答案が3つ出てくるGeminiに回答を求めてみることが多いです。3つの回答案を比較しましたが、いまいちしっくりきません。Chat Hubに移って他の回答も見てみましょう。

回答例2

ケーススタディ1:Claudeの回答例

Chat Hubで同じプロンプトを入力して得られた回答の中から、自分が適切だと思うものをセレクトします。ここでは、Claudeでの回答が一番シンプルで無難かなと思ったので、こちらを採用してみます。

最終的なメール内容
最終的なメール文面は以下のようなものになりました。自分で考えてもメール文章作成に要する時間はさほど変わらないかもしれませんが、モヤモヤ、イライラしながらメール文面を考えることに労力を割かなくてよいので、その分ストレスが軽減されます。

この度は業務委託のお話をいただき、誠にありがとうございます。
完全リモートでの業務遂行を前提に承諾させていただきましたが、キックオフミーティングについて確認させていただきたい点がございます。

ミーティングも業務の一環であると認識しておりますが、その場合、ミーティング時間の報酬および貴社までの交通費についてもご検討いただけますでしょうか。もしこれらの条件についてご相談が難しい場合は、誠に恐縮ではございますが、今回の業務をお引き受けすることは控えさせていただきたく存じます。

ご多忙の折、大変恐縮ではございますが、ご検討いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

▶︎ケーススタディ2:不均衡な契約内容の削除
契約を締結する際にも企業側が提示する契約内容は不均衡な内容が多く、それらの内容を削除・調整をお願いすることも、かなり精神的な負荷がかかる場面です。生成AIは法律的な表現に対してもサポートしてくれるというメリットもあります。ここでも、生成AIを活用して、自身の主張を上手に伝えてみましょう。

プロンプトとして提示した文章
まず、自分の主張したい点について、思うままに感情をぶつけた文章を作成し、その上でビジネスメールに転換する文章を生成AIに考えてもらいましょう。

ケーススタディ2:プロンプトとして提示した文章

「契約内容ですが「著作人格権を行使しない」と「競業避止義務」の条項については削除してほしいです。著作権譲渡に関しては一般的なものとして理解できますが、署名記事であるのに「著作人格権を行使しない」とあるのは文責があるのに勝手に書き換えられる可能性があるということですよね?また「競業避止義務」については、現在請け負ってる他のお仕事にも影響が出ますし、不均衡な契約だと感じますので承服できません。削除してもらえなければ契約を辞退します!」

この文章を、相手方に失礼のない文面になおした上で、なおかつこちらの主張が伝わるビジネスメールに置き換えてください。

回答例1

ケーススタディ2:Geminiの回答

Geminiの回答案は、どれもそれなりに良い文面ですが、少し長いような気がするので、Chat Hubに移って他の回答も見てみましょう。

回答例2

ケーススタディ2:Chat GPTの回答

今回はChat GPTの回答がシンプルかつ、こちらの言いたい内容も過不足なく伝えてくれているので、こちらを採用したいと思います。

最終的なメール内容
最終的な文面が以下になります。前後に不要な挨拶文が入っていたりするので、そこはカットし、改行して読みやすくしてみました。かなりキツめな文面も、失礼のない丁寧な文面に置き換えられていることがわかります。

いつもお世話になっております。

契約内容について一点、お願いがございます。現在ご提示いただいている契約書に含まれている「著作人格権の不行使」と「競業避止義務」の条項について、再検討いただけないでしょうか。

まず、「著作人格権の不行使」についてですが、著作権譲渡の部分は理解いたしましたが、署名記事である以上、文責がある立場でありながら、内容が勝手に変更される可能性があることには懸念を感じております。そのため、この条項については削除をお願いしたいと考えております。

また、「競業避止義務」に関しましては、現在請け負っている他のお仕事にも影響を及ぼす可能性があり、私にとって不均衡な契約内容となってしまいます。そのため、こちらについても削除をお願いしたく存じます。

もしこの二点についてご対応が難しい場合、誠に恐縮ですが、今回の契約を辞退させていただくことになるかと思います。お手数をおかけしますが、何卒ご理解とご検討をお願い申し上げます。

▶︎ケーススタディ3:謝罪
当然のことながら謝罪の時などは、自分の言葉で伝えることが非常に大切です。生成AIが書いた文章かどうかというのは、思っている以上に見分けがつくものです。自分の言葉で文章を作成したり、直接あって頭を下げるべき状況で生成AIを利用は避けるべきでしょう。

ただ、フリーランスの場合、相談相手に生成AIを活用することは有益なケースもあります。私もミスをしてしまった時に、どのような対応をすべきか悩み生成AIに相談したことがあります。その失敗は取引終了に繋がるようなミスだったのですが、生成AIは「言い訳や誤魔化しはせずに、正直にミスの内容を報告しなさい」と諭してくれました。私自身も正直に報告した方が良いと思っていまいしたが、生成AIがメンター的な存在となって後押ししてくれたことが、正しい行動に結びついたように思います。

結果的に仕事はなくなりましたが、大きなトラブルになることは回避できたという点で、あの時生成AIがはっきりと忠告してくれたことは、とても役立ったと感じました。また、謝罪の場合、生成AIを文面チェックとして活用すると、相手方の感情を損ねると言ったことを避けられるので以下のように試してみましょう。

プロンプトとして提示した文章
ここでは、しっかりと自分で考えた上で文面を作成し、その上で相手方に失礼がないか、不快に思わせないかをチェックするために生成AIを活用するのがポイントです。また、なるべく自分の言葉で伝えたいということもプロンプトに書き添えてみました。

ケーススタディ3:プロンプトとして提示した文章

「この度は、私のミスによって大変なご迷惑をおかけしたこと深くお詫びします。こちらから直接お伺いして謝罪申し上げるのが筋かと思いますが、まず早急にお詫び申し上げたくメールいたしました。故意ではなかったとはいえ、私のチェック不足でおきた自体ですので、大変責任を感じております。今後、同じミスを犯さないよう心がけますので、引き続きよろしくお願いいたします。」

この文章に、もし相手方が不快に感じる部分があれば修正して、相手方にこちらの謝意が伝わるよう調整してもらえますか?謝罪なのでなるべく自分の言葉で伝えたいので、全面的に文章を修正するのは避けてもらえればと思います。

回答例1

ケーススタディ3:Geminiの回答

Geminiの回答は、どれも元の文章を大きく書き直されてしまっているので、こちらの意図が伝わっていない回答になってしまっています。

回答例2

ケーススタディ3:Perplexityの回答

Chat Hubで他の生成AIの回答を引き出してみます。今回はPerplexityが一番こちらの意図を理解した文面チェックをしてくれたようなので、この文章を採用します。

最終的なメール内容
Perplexityの修正は、文法的な修正と将来的な対応策を明示し誠意を示すという追加が加えられるのみにとどまっており、自分が考えた文章である部分は活きています。ミスを犯した状況では気が回らないことも多いので、冷静に判断できる誰かにアドバイスを求めたくなります。そういう意味において、生成AIに文面チェックしてもらうことは有益です。

この度は、私のミスによって大変なご迷惑をおかけしたこと深くお詫び申し上げます。こちらから直接お伺いして謝罪申し上げるのが適切かと思いますが、まず早急にお詫び申し上げたくメールを送らせていただきました。故意ではなかったとはいえ、私のチェック不足で起こった事態ですので、大変責任を感じております。今後、同じミスを犯さないよう心がけ、再発防止に努めてまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

このように「この文面に相手を不快にさせるような文言や内容があったら適切に書き直してもらえますか?」といったようにメール文面のチェックに、生成AIを活用するといった使い方も役立つと思います。生成AIはその時の感情に流されません。また膨大なデータから平均的な回答を導き出すので、常識的な対応やより適切な受け答えを導き出すのにも役立つのです。

精度・倫理面など生成AIが内包する課題と今後の展望

1.日本語のプロンプトでは工夫が必要
日本語の場合、主語が明確になっていない文が多いため、プロンプトの内容によってはメッセージ内容の人間関係が逆になって回答されることも多々あります。また、敬語・丁寧語などについてはかなり精度が上がってきていますが、非常に堅苦しい文面になって出力されることが多いです。逆に「もう少しフランクな感じにしてください」と指示すると、過度にフレンドリーな文面になることもよくあります。こうした問題への対策としては、一度自分なりに伝えたいことや考えを文章にまとめ、それを括弧で閉じて、この文章をより適切なものへ改善して欲しいといったお願いをするといったやり方が良いと思います。

2.ハルシネーションや倫理面の問題の克服
文章を生成するAIには「ハルシネーション(Hallucination)」という、学習データに存在しない情報や、文脈からも明らかに矛盾を含んでいる情報をあたかも事実のように回答してしまうといった現象が起こる課題がありました。この問題は、学習データの品質向上など、ハルシネーション対策の技術開発も進んでおり、課題は克服される方向に向かっています。

例えば、ハルシネーションを低減するための技術として大規模言語モデル(LLM)が回答を生成する際に外部データベースから最新の情報を検索し、それに基づいて回答を生成する「検索拡張生成(RAG:Retrieval Augmented Generation)」という技術の開発が進んでいます。検索拡張生成では、文章を数値ベクトルに変換し、意味的に近い文章同士を高速に検索できる「ベクトルデータベース」という技術を用いることで、検索の効率化と、より正確な情報の取得が可能になります。また、ファクトチェック機能、出力フィルタリング、コンテキストの制限などLLMが生成するコンテンツの品質を保つための制約やルールを設定する「AIガードレール」という技術を用いることで、剽窃や虚偽情報の生成といった倫理面の問題を克服しようと試みています。このように、ハルシネーションや倫理面の問題に関しては、様々な技術によって改善される方向にありますが、完全な解決には至っていません。

私もチャット生成AIを利用し始めてから、数多くの失敗やミスを経験しています。最初の頃は、出力された文章をそのまま信用して使ってしまってこともあり、後になって回答のベースになった記事やデータが判明して、結果的に剽窃に近い行為に手を染めてしまったのではないかと思い悩んだケースがありました。ただ、具体的にどのような場面でハルシネーションや剽窃に近い回答が起こりやすいのかといったことは、経験を積まないと掴み取れない部分かとも感じており、早い段階で生成AIを利用するリスクを身を持って経験し、職業倫理とは何かを立ち返ったことは無駄でなかったと思います。

さらにもう一つ加えるならば、こうした倫理面の問題は本稿で紹介したメール文章作成では起こりにくいという点です。そうした観点からも、メール業務は生成AIを取り入れやすい作業領域であると言えます。

3.特殊なケース・レアケースには不向き
生成AIは、過去にあったデータからテキストを作成します。したがって、今まで起きたことがない事例、レアケースなどには対応できない場合もあります。また前述のように感謝や謝罪など、自身の気持ちや感情をしっかりと伝えなければいけない状況では、生成AIにすべての文章を作成してもらうことは不適切です。

4.生成AIは技術革新の途中である
大変便利な生成AIですが、多くのサービスが開発段階で提供されています。また、現在はOpen AIのChat GPT、MicrosoftのCopilot、GoogleのGeminiなどが主要なチャット生成AIツールとして利用されていますが、この勢力図は今後大きく変わる可能性もあります。GoogleはGeminiの技術を応用した軽量の「Gemini Nano」を開発しており、ローカルPC端末環境での生成AI利用が現実的になりつつあります。また、Appleも先日正式に発表された「Apple Intelligence」というAI技術もローカル端末環境での生成AI利用が含まれており、開発競争はクラウドからローカル端末上で動作する次のステージへ移っています。

Claudeの公式ページ
Perplexityの公式ページ

さらに、Metaがオープンソースで公開した「Llama(ラマ)」をはじめ、「Perplexity(パープレキシティ)」「Claude(クロード)」といった注目すべきモデルが登場しており、生成AI市場は群雄割拠の様相を呈しています。加えて、Open AIはChat GPTの技術を発展させた検索AI「Search GPT」もリリース予定です。このように生成AIの開発は日進月歩のため、これら言語モデル勢力図に関する今後の動向も注視していく必要があります。

主要な生成AIモデル一覧

名称開発元説明
Chat GPTOpenAI対話型生成AIの代表格。Open AIは対話型AIに続き「Search GPT」という検索型AIも開発中
CopilotMicrosoftプログラミングのコード生成をアシストするAIとして広く知られているが、Bing Copilotなど、いくつかのMicrosoftサービスにも応用されており対話型の生成AIとしての機能も有する
GeminiGoogleGoogleの他サービスと連携して様々なタスクに対応できる汎用性の高さが特徴。「Gemini Nano」はローカルPC端末で利用可能な軽量の生成AIモデル
GemmaGoogle詳細は明らかにされていながGeminiシリーズとの関連性が注目される生成AIモデル
PaLM 2Google多言語対応、コード生成に強みを持つ大規模言語モデル
Apple IntelligenceAppleAppleの次期端末に搭載予定のパーソナルインテリジェンスシステム
LlamaMetaオープンソースの大規模言語モデル。研究コミュニティで広く利用されている(ただし日本語対応は不十分)
PerplexityPerplexity AI検索エンジンと連携することで、より正確で関連性の高い情報を生成できる生成AIモデル
ClaudeAnthropicAIスタートアップ企業が安全で信頼性の高い生成AIを目指して開発した生成AIモデル。ChatGPTの競合モデルとして注目される
Mixtral 8x7BMixtral AIフランスのスタートアップ企業が開発した大規模言語モデルであり、欧州発の生成AIとして注目される(ただし日本語対応は不十分)

生成AIの利用については、これらの課題や展望を踏まえて、業務のどの部分で取り入れていくのが良いか、自分の中で線引をしてルールを決めていくことが大切です。クリエイターの場合は、例えば価格の交渉など、ある程度想定問答がイメージできるようなメール文章作成では積極的に導入し、創作活動も含めて自分の才能や感情を発露しなければいけない場面では、意図的に生成AIの利用を控えるといった向き合い方が非常に重要になってくるでしょう。

まとめ

クリエイターと一口に言っても、生成AIに向き合う立場は様々であることを再認識することは大切です。アーティスト性や作家性の強いイラストレーターや漫画家、映像作家、小説家といったクリエイターは、生成AIに対して批判的・否定的な立場を取っていくことが自身の創作活動を守ることになるのに対し、ライターやデザイナー、エンジニアといったクライアントから依頼されて業務を請負う立場のクリエイターにとっては、今後のビジネスシーンにおいて大きな影響力を持ち続けるであろう生成AIの存在を無視できない状況になりつつあるからです。私もライター・編集者としての立場とイラストレーターとしての立場で、生成AIとの向き合い方は全く異なっています。

スポーツチームのスポンサーと同様に、メディアや広告といったコンテンツ制作を支えるのは、その時その時の成長産業です。私がライティングの求人案件を探している際も、生成AIの領域に関わる企業からの案件が増えていると日々実感しています。また、IT分野だけでなく、マーケティング、製造業、小売業、医療、教育といった様々な分野でAIの知識が必要になってきています。そうした変化の中で、クリエイターも自分の創作活動とは関連の薄い領域で生成AIを利用してみることは重要だと感じます。

かつて、DTPやコンピュータグラフィックスへの移行が起こった時代にも、アナログ作業を守ることで自身の創作を堅持したアーティストや作家は数多く存在しました。しかし、多くのデザイン関連職の方々はPCを使ったデザイン業務に移行したことも確かです。創作者としての職業倫理に反しない範囲内で生成AIを活用していく人に対しても一括して「生成AIに手を染めた」と批判する前に、それぞれの立場を理解しておかなければいけません。商業活動の中で他者から依頼を受けて創作活動を行うクリエイターは、その時代の変化に適応できなければ、生き残ることはできないからです。

本記事で紹介したメールの文章作成術をはじめとして、ストレスフリーな作業環境構築に生成AIを活用していくアプローチは、他者の権利はもちろんのこと、自身の権利や創作意欲を侵食することなく取り入れられる手法だと思いますので、ぜひ一度トライしてみてください!

著者プロフィール

塚本 建未
ライター・編集者・イラストレーター
フリーランスのライター・編集者・イラストレーター。高校はデザイン科を卒業し、大学は、文学部とスポーツ科学部の2つの学部を卒業。フィットネス・トレーニング関連の専門誌で編集者・ライターとしてキャリアを積む。メインの活動の場をWebメディアに移行してからは、ITツール紹介やWebマーケティング分野などを得意領域として活動を続けている。
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