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佐藤詩織と巡るクリエイティブな世界

2023.05.19 Fri

佐藤詩織さんと“クリエイティブな人・コト・モノ”に出会う連載!

繊細な手仕事とCADで生み出されるシュガークラフト作品!「ROSEPETAL」の優美な世界

撮影:米山典子 スタイリスト:藤長祥平 ヘアメイク:杉野智行 衣装:mimi33、ANEMONE

元欅坂46のメンバーで、武蔵美卒の佐藤詩織さんと、“クリエイティブな人・コト・モノ”に出会う連載企画。2回目は、東京・蔵前を拠点にシュガークラフト・オーダーケーキの制作を手掛ける、「ROSEPETAL(ローズペタル)」主宰・星野彰子さんのアトリエを訪問しました。繊細で優美な作品たちが並び、シャビーシックな趣の空間と相まって、夢のような世界が広がります。

また、佐藤さんがシュガークラフトの技法を使ったケーキのデコレーションにも初挑戦。アーティストだからこその真剣な表情を浮かべて制作していました。スマホの壁紙プレゼントもチェックしてくださいね。

砂糖で作るアート!美しきシュガークラフトの世界

画像提供:UNO DESIGN

シュガークラフトとは、砂糖を材料にしたペーストでお花やさまざまな紋様をつくり、ケーキやお菓子にデコレーションする手工芸品のこと。イギリスでは19世紀のヴィクトリア女王の時代に発展し、現在でもロイヤルウェディングではフルーツケーキに豪華なシュガークラフトの装飾を施したウェディングケーキが定番になっています。

ROSEPETALの代表でケーキデザイナーの星野彰子さんは、女子美術短期大学卒業後、1997年からニコラス・ロッジ・インターナショナル・シュガーアートギャラリー・ジャパン、パディ・ケーキハウスなどでシュガークラフトを学び、2000年からROSEPETALとして活動をスタートしました。

現在は、シュガーデコレーション・ウェディングケーキのオーダーメイドを中心に、洋菓子のデザイン・製造、広告や雑誌などメディア用の作品も手がけ、幅広く活動するほか、アイシングクッキーに関する著書『お絵描きクッキー』は海外でも出版されています。

星野さんの作品は、淡く可憐な色使い、巧みな技術などが相まり、華やかでいて繊細な作風が魅力。今回は、作品作りのこだわりからインスピレーションの源まで、さまざまな話を伺いました。手作業のイメージが強いシュガークラフトですが、意外にも、現代だからこその手法も取り入れているのだそう。

繊細な手仕事が光るシュガークラフトに魅せられて

佐藤 砂糖でデコレーションするお菓子というと、アイシングクッキーは知っていたのですが、シュガークラフトに触れるのは今回が初めてです。そもそもどのような技術なのでしょうか?

星野 シュガークラフトは主にクリーム状のアイシングと粘土状のシュガーペーストを使用してケーキをデコレーションする手法です。クリームのように絞り出したり、筆を使って模様を描いたり、ペーストをクッキーのように型抜きしたりとさまざまな技法があります。

一見、生花のように見えますが、こちらも砂糖で作られています

佐藤 先ほど手にしたあじさいの花(画像)も花びら1枚1枚が精巧で、砂糖でできているなんてびっくりしました。星野さんがシュガークラフトに興味を持ったきっかけは?

星野 20代半ばのころ、書店の洋書売場でシュガーデコレーションの本を偶然手にしたのがきっかけです。ケーキの見た目の華やかさだけでなく、繊細な手仕事に魅了されました。その後、世界的シュガーアーティストであるニコラス・ロッジ氏の作品と出会い師事してきました。

初めは趣味感覚で作品を作ってウェブサイトで公開していたのですが、やがて「広告や雑誌掲載用の作品を作ってほしい」とメディアからご依頼をいただく機会が増え、2000年からROSEPETALとして活動しています。

タイガービルヂングにアトリエを構えている。丸い窓が印象的な空間

佐藤 アトリエも素敵ですね。特に丸い窓がレトロでかわいいです。

星野 約10年前に、タイガービルヂング(※)にアトリエを構えたのですが、やはり決め手はこの丸窓でした。蔵前の街の雰囲気も気に入っていますし、合羽橋や浅草橋も近いので資材を買いに行くのに便利なんです。最近はカフェや雑貨店などが増えて、さらに活気がありますよね。

※1934年に建築されたテナントビル。2016年には、国の登録有形文化財(建造物)に登録されている。館内は非公開。関係者以外立入禁止。見学は不可

花々や植物からデザインのイメージを膨らませる

星野さんお気に入りの作品と一緒に

佐藤 星野さんの作品作りはどのように進めているのでしょうか?

星野 季節の花々から着想を得て、まずはデザイン画を起こしてイメージを膨らませます。ROSEPETALは“バラの花びら”という意味ですが、バラの花は大好きな花の中のひとつです。一輪だけでも佇まいに存在感があるし、花びら1枚の造形も美しいなと思って。女子美の短大では刺繍を専攻していたので、刺繍の図案や技法をモチーフにすることもあります。

佐藤 創作活動の原点は刺繍にもあったんですね。これまでの作品の中でお気に入りの作品はどちらでしょうか?

画像上右・ボックス制作のための手描きの設計図

星野 個人的に気に入っているのはこのデコレーションケーキ(画像上左)です。淡いベージュの土台のトップに白とピンクの花を一面あしらい、側面には回転木馬のモチーフを貼り付けました。柔らかな淡い色が好きで、砂糖の白色を活かしながら食用色素でほんのり色付けをしています。こちらは、すべてお砂糖でできたボックス(画像上右)です。それぞれの面に配置した花のモチーフは、学生時代に製作した刺繍の図案がベースになっています。

作品制作にはCADや3Dプリンタを活用することも

左手側が星野さんの息子・瑠斗さん
白とピンクの型抜きは3Dプリンタで制作されたもの。上の桜の型抜きは手作り

佐藤 アトリエにはいろんな形の抜き型がありますね。これはなにに使うのでしょうか?

星野 例えば同じ形の花びらを大量に作る時や、同じサイズのパーツがいくつも必要な場合は、シュガーペーストを平たく伸ばしてクッキーのように抜き型で型抜きします。先ほどの回転木馬のモチーフはシリコン製のモールドで型抜きしたものです。

抜き型は市販のものを使うこともありますが、理想のデザインがない場合はアルミ板や3Dプリンタで手作りすることもあります。

CADで作られた設計図。CADを使用することで、より緻密な作品を作れるように

実は息子が美大でインダストリアルデザインを専攻していて、ときどき作品作りも手伝ってもらっているんですよ。何層にも重なった大きなデコレーションケーキを制作する際は、息子にCADで設計図を作ってもらい、細かなサイズ感やディテールを詰めています。

佐藤 このような作品の制作は、一貫して手作業のイメージがありました。CADや3Dプリンタを活用されているとは驚きです。ツールを上手に使うことで表現の幅も広がるんですね。

オーダーケーキも広告作品も砂糖の表情を大切に

佐藤 オーダーメイドの作品以外にも広告も多数手掛けられているんですね。それぞれ制作においてなにか違いはありますか?

星野 ウェディングやアニバーサリーのケーキは、淡い色を基調にしたものを作っていますが、反対に広告や雑誌用のケーキやクッキーは存在感が引き立つからか、強い色味のデザインを依頼されることが多いです。普段のトーンとは少々異なりますが、砂糖菓子ならではの柔らかな雰囲気や表情は大切にしたいと思っています。

佐藤 創作のインスピレーションはどこから得ていますか?

星野 お花や植物ですね。趣味でよく花のスケッチもしています。この間美術館に行った時も、作品鑑賞よりも美術館のお庭に咲くお花たちが綺麗で、つい見入ってしまったこともあります。

それから大好きな絵本はいつも手元に置いて見返しています。ヘンリエット・ウィルビーク ル・メールというオランダの絵本作家で、子どもや風景を淡いタッチで描いた印象的な作品です。佐藤さんとってのインスピレーションの源はなんですか?

佐藤 好きな音楽を聴いたり、好きな色を選んで「この色とこの色を組み合わせたらどうなるだろう?」というひらめきから作品のイメージを膨らませたりしています。最近ではオレンジと青色の組み合わせや、ビビッドなピンクも気になっています。

でも制作にとりかろうとすると、どうしても締め切り間近になってから集中しがちで……。星野さんはこれまでたくさんの作品を作ってこられたと思いますが、制作に向かう気持ちを作るために心がけていることはありますか?

星野 やっぱり気持ちの波はありますよね。私も気分が乗らない時は少し作業から離れて、気分転換に自然に触れたりお花を愛でたり、好きなものに触れるようにしています。自分の“好き”を追求したら、作品を作りたい気持ちが湧き上がってくる感じがするんです。

佐藤 私にとっても花は身近な存在で、家でも常にお花を飾るようにしています。小さい頃にバレエを習っていて、発表会などで花束をいただく機会が多かったからかもしれません。最近は花瓶に飾った後、ドライフラワーにするのが楽しみです。私も星野さんのように、これからも自分の「好き」の道を突き詰めたいと思います!

ブラッシュエンブロイダリーなど、シュガークラフトに初挑戦

今回は、シュガークラフトのさまざまな技法を使って、3段重ねのケーキのデコレーションに挑戦します。

必要な道具は筆やパレットナイフ、絞り袋に入れたアイシングなど。アイシングは粉砂糖と卵白を混ぜ合わせたもので、シュガーペーストは用途によって何種類かありますが基本的に粉砂糖に増粘剤などを加えています。

まずは、1段目のケーキに装飾を施します。絞り出したアイシングを乾かない内に筆でのばし、白糸で刺繍したような装飾を施す「ブラッシュエンブロイダリー」という技法を用いて、花びらと葉、枝を描きます。

花びらの縁の部分をアイシングで細く描き、筆でなぞるようにして1枚ずつ花びらの形を作っていきます。手早く進めないとアイシングが乾いてしまうので、丁寧さとスピードが求められる工程です。「楽しい!無心になれそう」と初めてとは思えないほどスイスイと筆を運ぶ佐藤さん。

星野さんも「アイシングを絞り出す分量や筆使いが慣れないと難しいテクニックなのですが、佐藤さんはその感覚をすぐに捉えられたようですね」と驚くほど。「花びらはしなやか、枝はゴツゴツといったように、植物の特徴を捉えて描写しているのが素晴らしいです」

次に、2段目のケーキの側面にフリル状の装飾「スクランチラッフル」を作ります。スクランチラッフルは本来、伸ばしたペーストを1枚ずつクシュクシュにしながら貼り付けるデザインですが、最近はフリル型のモールドも数多くあります。今回はスクランチラッフル型のシリコンモールドにシュガーペーストを伸ばして成形します。

「ブラッシュエンブロイダリーは絵を描く感覚に近かったですが、これはお菓子作りに似ていますね」と佐藤さん。

スクランチラッフルを一周分ぐるりと貼り付けたら、土台のケーキに貼り付けます。接着剤代わりにアイシングを塗り、パレットナイフでうすく伸ばしてケーキ同士を接着させます。

2段目と土台の継ぎ目には、口金をつけた絞り袋にアイシングを詰めて生クリームのように絞り出す「パイピング」を施します。「ケーキを作っているみたい!SNSでケーキ職人の動画を観るのが好きなんですが、パティシエになれたみたいで嬉しいです。少しずつ作品らしくなってきましたね」と佐藤さん。

アイシングは生クリームやバタークリームに比べるとかたくて絞りにくいのだそうですが、こちらも迷いなく模様を描いていきます。「ササッと絞られて、さらに一つひとつの絞りの大きさもそろっていてきれいです。普段から創作活動に慣れ親しんでいるからかもしれませんね」と星野さんも太鼓判を押すほど。

最後は、土台のケーキをキャンバスに見立て、ゴールドの色素で自由にペインティングしていきます。砂糖を使ったアイシングは水分に弱いため、色素は水で溶かずジンやウオッカなど揮発性の高い無色透明のアルコールを使うのがポイントです。佐藤さんは「思い通りの色の濃さにするのが難しい……。一段目のお花にちなんで、花びらが舞っている風景をイメージして描きます」とのこと。

これで完成!「楽し過ぎてあっという間でした。花びらを描く部分は、アイシングを絞る強さや筆でなぞる力加減が繊細でコツを掴むのが大変でしたが、満足のいく作品になったと思います」と佐藤さん。「初めてということでしたが、筆に迷いがなくて感心しました。仕上げのペイントにより全体に動きが出て、軽やかな印象のケーキになりましたね」と星野さんも絶賛の仕上がりになりました。

■スマートフォン用の壁紙ダウンロードはこちらから

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※zipファイルでのダウンロードになります
※zipの解凍方法、ダウンロード方法は、スマートフォンの機種により設定方法が異なるため、説明書などをご確認ください

DATA

 ROSEPETAL(ローズペタル)
問い合わせhttps://rosepetal.jp/contact/
公式サイトhttps://rosepetal.jp/top.html

プロフィール

佐藤詩織
アーティスト
武蔵野美術大学で学びながら、欅坂46でアイドル活動をし2020年にグループを卒業。現在5年間のアイドル時代のダンスや、11年間経験したクラッシックバレエを活かし、自身のグラッフィック制作や個展の開催、衣装制作に映像制作を手掛けるアーティストとして活動。ファンクラブ限定企画で日本の伝統技術を紹介する「SART TV」をスタート。体験取材を公開中。
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