• はてなブックマーク
  • RSS
  • Line

アート/イベント

【イベントレポート】デザインフェスタvol.59 〜さまざまな表現のかたちが集まった2日間〜

2024.06.03 Mon

デザインフェスタvol.59が、2024年5月18日(土)と5月19日(日)の2日間にわたり、東京ビッグサイト(西館&南館)で開催されました。「デザフェス」の愛称で親しまれ、「自由に表現できる場」としてプロ/アマを問わずに参加できる恒例のアートイベントです。会場には約6,500ブースが展開され、今回も趣向を凝らしたバラエティ豊かなジャンルの作品を楽しむことができました。

アイデアをかたちにする工夫

デザインフェスタvol.59では、前回までと同様に「明るいブースエリア」と「暗いブースエリア」に加え、ステージでのパフォーマンス、各種ワークショップ、カフェ・フードエリア、出展者だけでなく来場者も飛び入りで参加できるワンコインランウェイなどが展開されました。メインとなるブース出展では、平面作品/ぬいぐるみ・フィギュア/雑貨/ファッションアイテム/アクセサリーなど、幅広いカテゴリーの作品が取り扱われています。

表現の方法も出展者それぞれで、「これはどうやって作ったのだろう?」と気になる作品も多いのが印象的でした。デザインフェスタでは、来場者と出展者が気軽にコミュニケーションを取りやすく、実際に制作方法や表現のプロセスなどを聞けることも醍醐味です。

レトロファンシーな作品を手掛けるイラストレーターのSASHIMIさん(@izu_0tome)は、「SASHIMI盛り合わせ」の名前でキキフジモリさんと共同出展していました(キキフジモリさんは土曜のみ出展)。似顔絵や可愛いイラストのグッズを出品しており、特に気になったのは「おきがえアクキ〜」です。

YouTubeでも創作活動に関する発信をしているSASHIMIさんのブース。右が着せ替えできる構造の「おきがえアクキ〜」(写真:SASHIMIさん提供)
 

アクリルキーホルダーはいわゆる “推しグッズ” としても定番アイテムとなっていますが、「おきがえアクキ〜」では2枚のアクリルを組み合わせることで、キャラクターの “着せ替え” ができる仕様になっていました。「このような構造のアイテムを作れるグッズ作成サービスがあるのかな?」と思いましたが、そうではなく、通常のアクリルキーホルダーを2枚発注し、手作業で組み合わせて完成させたそうです。

卓越した技術で人々を魅了するブース

暗いブースエリアで出展していたアトリエココ(@atelier_coco)の「ランタンカード」も、工夫が凝らされた美しい作品でした。暗いブースエリアは、会場の照明を落とすことで、映像作品や照明を効果的に使った表現が映えやすいエリアです。

「ランタンカード」は、出力サービスを活用してレーザーカットした紙製のポップアップカードの背後にキャンドルライトが配置されており、キレイな輝きを楽しめる作品でした。ライティングなしの状態でも非常に緻密なビジュアルに驚かされますが、光が加わることで幻想的な雰囲気を楽しむことができ、さらに作品の魅力がグッと高まります。「ある1つの世界」を思い描き、その世界を構成するモチーフとして城などの建物の絵柄を決めているそうです。

暗いブースエリアならではの美しさが感じられた「ランタンカード」

デザインフェスタでは、アーティストが実際にその場で作品を描き上げていく巨大なライブペインティングも見どころの1つです。今回もさまざまな画風の作品が集まっており、その中でも塙雅夫さん(@m_hanawa_)の緻密な絵画に、多くの来場者が足をとめて感嘆の声をあげていました。

圧倒されるライブペインティングを披露していた塙雅夫さんのブース

塙さんは、映画撮影所東宝スタジオでの「七人の侍」の巨大壁画や、東宝スタジオの生誕60周年記念の「ゴジラ」の巨大壁画なども手掛けてきた画家・壁画家です。デザインフェスタのブースでも、まるで写真のような精密な描写が圧巻でした。塙さんは友人に薦められて今回が初出展でしたが、「作品を見た人から直接の感想をもらえる」ところに、普段の仕事とはまた違った楽しさを感じたそうです。

初出展と継続出展のそれぞれの楽しみ方

2023年12月〜2024年2月に実施された「ワコム40周年 イラストコンテスト」で最優秀賞を受賞したらっちーさん(@cosmos__34)も、今回がデザインフェスタに初参戦でした。このようなイベントに参加すること自体がまったく初めてとのことで、多くの驚きや発見があったようです。らっちーさんは、「ネコ曼荼羅」シリーズの原画やクリアファイルなどのグッズを出品し、今回のために制作した大判のポスターでブースを飾ってイベントに臨みました。

個性的な魅力を放つ「ネコ曼荼羅」が印象的ならっちーさんのブース

最初はどれくらいブースを訪れてくれる人がいるのか不安もあったようですが、終わってみれば初めてのデザインフェスタは、らっちーさんにとって「想像していたよりずっと人が多かった」と感じるイベントでした。普段からSNSなどを通じて作品を好きでいてくれる人に加え、初見ながらその場で足をとめてブースに立ち寄ってくれる人も多かったそうです。

デザインフェスタは「いつか参加してみたい」と考えるクリエイターが多いイベントです。そして、同じくらい「でも本当に自分のブースに人が来てくれるだろうか」といった不安の声も多く聞かれます。しかし、思い切って参加してみると、きっと世界が広がり、新たな制作のモチベーションとなるきっかけを得られるイベントではないかと思います。

会場では、前回に初出展だった「@コドモの事情」の2人とも再会を果たすことができました。中学生と小学生の2人組で、前回は中学1年生だったN極さんは中学2年生、小学5年生だったS極さんは小学6年生に進級しています。

随所で前回の出展の経験が生かされていた「@コドモの事情」のブース

「@コドモの事情」のブースは、今回は「勉強部屋」をコンセプトに掲げ、ランドセルや辞書などのアイテムで演出されていました。前回にはなかった試みとして、即興で似顔絵を描くサービスなども展開されています。

2人からは「前回も来てくれた方が今回もブースに来てくれて嬉しかった」「前回は少し恥ずかしがってしまったけれど今回は来場者への声かけを頑張った」などの感想が聞かれました。リピーターはもちろん、また新しい人に知ってもらえる機会にもなり、今回もとても楽しいイベントとなったようです。2人の今回のブースからは「継続して出展することの楽しさ」が新たに感じられました。

ちなみに、「@コドモの事情」のブースでは、リピーターの来場者は主に作品の購入を目当てとする人が多く、新規のお客さんは似顔絵サービスをきっかけに足をとめてくれることが比較的に多かったそうです。この状況は前述のSASHIMIさんのブースでも同様でした。イベントでの集客について考えるうえで、何か1つのヒントになるかもしれません。

人それぞれの表現のかたちが集結

デザインフェスタは、自分では想像もしなかったような新しい発想、これまで触れてこなかった多彩な表現に出会えることが最大の魅力です。ブースだけでなく、ライブ感のあるステージが屋内と屋外に設置され、演奏や演劇などのさまざまなジャンルのパフォーマンスが繰り広げられました。

出演者の1組である「凜派」(@rinpajp)は、「凜とした美しさと強さを持つ女性」をコンセプトにした女子殺陣チームです。「凜派」は、2023年にフランスでの「Japan Expo Paris 2023」にも出演しています。今回のステージでは、迫力の剣技からリズムに合わせた楽しいダンスまで、メンバーたちが躍動する姿が披露され、会場を盛り上げていました。

屋内の広いショーステージで披露された「凜派」のパフォーマンス
 

通常の出展ブースでも、“パフォーマンス込み” や “来場者を引き込む参加型” のいろいろな工夫が見られました。特にユニークな趣向で印象に残ったのが、全身タイツの可能性を独自に追求し続けている「トウキョウゼンタイスタイル」(@TOKYOZENTAICLUB)のブースです。カラフルな全身タイツを身に纏った出展者のほか、真っ白な全身タイツを着用した人も控えていて、そこに来場者が自由に落書きをできるという面白い企画を展開していました。

白タイツの “人” のキャンバスに来場者が自由に書き込めるユニークな企画

デザインフェスタの会場を回ると、アートの幅広さや奥深さに驚かされます。良い意味で「なんでもアリ」なところが魅力で、表現というものに「人それぞれの自由なかたち」があることをあらためて実感できます。

来場者と出展者の多様性が特徴的なイベント

今回のデザインフェスタ会場にも、とても多くの来場者が訪れました。子どもと一緒にイベントを楽しんでいる来場者も多く、会場では赤ちゃんの撮影サービスを手掛けるブースなども見られました。デザインフェスタは1990年代からの長い歴史があり、世代を超えて愛されているイベントであることの証拠とも言えるでしょう。

今回も多くの人が来場したデザインフェスタ

また、会場では外国からの来場者・出展者も多く見られました。その一例として、タイ、シンガポール、台湾、香港、韓国からクリエイターたちが参加したブース群「join to connect asia」が展開されていました。アジア各地のクラフト作品に触れられる一画となっており、国籍も問わずにアーティストのオリジナル作品との出会いを楽しめるデザインフェスタならではの魅力の1つであると感じられました。

「join to connect asia」プロジェクトを通じて香港から参加していたSandyさん(@whynothongkong)のブース

* * * * * * * * * *

今回のデザインフェスタも、表現者たちと来場者たちによる “熱” を感じさせる2日間となりました。次回の「デザインフェスタvol.60」は、同じく東京ビッグサイト(西館&南館)を会場として、2024年11月16日(土)〜11月17日(日)に開催予定です。

イベント主催:デザインフェスタ有限会社
URL:https://designfesta.com/
2024/06/03

アート/イベントの他の記事

一覧を見る

読込中...

逆引き辞典逆引き辞典