• はてなブックマーク
  • RSS
  • Line

ニュース

日本デザイン振興会、誰でも無料で閲覧できる「デザイン白書2024」をオンラインで公開

2024.06.25 Tue

公益財団法人日本デザイン振興会が「デザイン白書2024(WHITE PAPER ON DESIGN 2024)」を公開しています。各都道府県、企業、行政などのデザインに関する多様な取り組みを紹介している内容で、Web上で無料で閲覧できる資料です。

PDF形式で誰でも閲覧できる資料

「デザイン白書2024」は、経済産業省デザイン政策室が監修を務めた350ページのPDF形式の資料です。2018年に経済産業省と特許庁が「デザイン経営」宣言を発表して以降の、日本国内の地域・企業・行政などのデザインに関する取り組みがまとめられています。

「デザイン経営」宣言では、デザインを活用する経営手法(デザイン経営)が推進されています。「デザイン白書2024」は、多様な取り組みを知ってデザインの意義や効果を深く理解することで、日本国内の “デザイン活用” がより高まることを目指した内容です。

本資料はPDFデータのみで発行され、冊子版は用意されていません。本編は主に「世界×デザイン」「地域×デザイン」「企業×デザイン」「行政×デザイン」「文化×デザイン」「資料」という6つのパートに分かれています。

日本で34年ぶりに開催された「世界デザイン会議」

「世界×デザイン」には、「WDO世界デザイン会議東京2023」の議論や発表内容が掲載されています。「世界デザイン会議」は、デザイン分野の国際組織であるWDO(World Design Organization)が主催している2年に1度の国際カンファレンスです。

33回目を迎えた「WDO世界デザイン会議東京2023」は、日本では実に34年ぶりの開催となりました。過去には1973年に京都、1989年に名古屋で開催されています。2023年は10月27日(金)から10月29日(日)までの3日間にわたって開催され、社会人類学者のティム・インゴルド氏をはじめ世界各国・地域から約60名が登壇しました。

イベントでは「Design Beyond−あたらしい世界のためのデザイン」をテーマに地球環境問題やAIなどのテクノロジーの進展と人間との関係性、それらを踏まえてデザインに何ができるのかが議論されています。「デザイン白書2024」では、実行委員長の田中一雄氏へのインタビューや各種のスピーチ、パネルディスカッションなどの内容を詳しく振り返ることができます。

地域・企業・行政の取り組みの事例を掲載

「地域×デザイン」「企業×デザイン」「行政×デザイン」では、具体的なさまざまな取り組みの事例が掲載されています。「地域×デザイン」は47都道府県の全てを1つずつしっかりと網羅していることが特徴です。一例として東京都のページでは「中小企業とデザイナーをつなぐデザイン経営」といったテーマに触れられています。

「企業×デザイン」では、地域企業やデザイン事務所、教育機関の取り組みなどによる豊富な事例が掲載されています。キヤノン、コクヨ、ソニーグループ、富士フイルム、ヤマハなどをはじめとする企業はもちろん、日本デザインセンターの「可視化の力で未来を切り開く」、多摩美術大学の「デザインの美意識と創造性を、社会とつなぐ」、武蔵野美術大学の「創造的思考力を養い、デザインの実践者を育てる」といったページにも要注目です。

「行政×デザイン」では、14の事例が掲載されています。デジタル庁、経済産業省(デザイン政策室/ヘルスケア産業課)、特許庁、環境省のほか、北海道旭川市や長野県諏訪市などの地方自治体の取り組みも紹介されています。

読み物としても楽しい「文化×デザイン」

「文化×デザイン」では、2023年に開催されたデザイン関連の企画展や祭典、アワードなど28のイベントが紹介されています。読み物としても楽しみやすい章です。国立工芸館で開催された「ポケモン×工芸展−美とわざの大発見−」、大阪中之島美術館で開催された「デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン」展などが紹介されています。

この「文化×デザイン」に収録されたイベントは、単発のものばかりでなく、東京ミッドタウン・デザインハブでの「日本のグラフィックデザイン2023」や、紙の専門商社の竹尾による「TAKEO PAPER SHOW 2023」、日本デザイン振興会(JDP)が主催する「グッドデザイン賞」など、定期的に開催されているものも多く含まれています。デザインの分野に詳しくなって感度を高めるためにも、ぜひチェックしておくと良いでしょう。

興味深いデータが満載の「資料」も必見

さらに「デザイン白書2024」では「資料」のページも見逃せない興味深い内容です。デザイン事業所の数、デザイン業の経済規模、デザイナーの数などの統計情報が掲載されており、行政施策・デザイン関連イベントなどの一覧も含まれています。

統計のページはシンプルなインフォグラフィックを活用して分かりやすく構成されていますが、特に「デザイン事業所の都道府県分布」という項目は印象的でした。東京に全体の3割以上の3,635事業所、大阪に1,139事業所があり、東京と大阪に日本の全体の半数近くが集中していることが示されています。

ある程度は想像がついたことですが、実際に数値・図版として見るとそのインパクトはかなり大きなものです。人々の働き方やライフスタイルが変化する中で、今回の資料に「地域×デザイン」という項目が含まれているように、今後は地方にも “デザイン” がさらに広がっていくことが重要であるように感じられました。

ちなみに、本資料によると、職業をデザイナーとする人たちは2005年から増加傾向が続いています。2005年から2020年までの間に約36,000人も増え、直近の国勢調査では合計で201,100人だったそうです。フリーランスの数が思いのほか少なく、企業に属するインハウスデザイナーが75%、企業に属さずに個人で活動するフリーランスデザイナーが24%となっています。

* * * * * * * * * *

「デザイン白書2024」は、国内の最新のデザイン動向が網羅的に取りまとめられた貴重な資料でした。デザインが経済や社会にどのような効果をもたらしているかも垣間見ることができ、誰でも無料で閲覧できることからも、ぜひ一読をオススメしたいレポートです。

公益財団法人日本デザイン振興会
URL:https://www.jidp.or.jp/2024/06/04/wpd2024
2024/06/25

ニュースの他の記事

一覧を見る

読込中...

逆引き辞典逆引き辞典