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アート/イベント

作品の保存と展示を両立させる美術館の“裏側の工夫”に迫った「ミュージアム・ワークス」展

2023.07.20 Thu

2023年11月12日(日)まで、諸橋近代美術館にて「ミュージアム・ワークスーみんなの知らない美術館」が開催されている。美術館の“裏側”にある努力と工夫に焦点を当て、作品の保存と展示をどのように両立させているかを紹介している展覧会。実際の事例を紹介しながら、美術館の役割や仕事について解説されている。

 

美術館の主な役割としては「作品収集」「展示」「調査研究」「教育普及」「保存」が挙げられる。今回の展覧会は、これらのうち普段はスポットが当たりにくい「保存」についても取り上げていることが特徴。「保存」は美術作品を後世へと守り継ぐために、非常に大切な役割となっている

美術館では、作品を適切に「保存」するため、日々さまざまな取り組みを実施。温湿度や照明の管理、地震対策、虫害やカビへの対策、作品や建物などの状態の記録、作品修復や設備修繕など、その内容は多岐にわたる。

本展では「第1章:構造と材質」で、まずは「保存」の第一歩となる美術作品の材質や構造に関する知識を紹介。絵画に使用される絵の具の原料が展示され、赤外線や紫外線などの特殊な光を用いて作品の構成を調べる科学的調査についての展示も行われる。

「第2章:展示と修復」では、諸橋近代美術館が実際に作品の展示環境を整えるうえでの工夫や、過去の作品修復の事例について紹介。作品が劣化する原因には、天災や人的事故、急激な温度・湿度の変化、光、虫やカビの被害などがある。

それらを未然に防ぐために、美術館では温湿度に徹底管理やスポットライトの明るさ調整などに配慮。それらを講じても経年劣化でやむを得ず損傷してしまう作品はあり、その場合は専門家が作品の状態を細かく調査して各作品に合った修復が行われる。

アルフレッド・シスレー「積み藁」(1895年)の実際の作品修復例

「第3章:保存の歴史」では、古来の保存の工夫である「曝涼(ばくりょう)」にならって、諸橋近代美術館で長いこと展示機会がなかった作品を一挙に紹介。「曝涼」は「虫干し」のことで、東大寺の正倉院で8世紀末の奈良時代から行われていたという記録も残されているそうだ。

本パートでは、サルバドール・ダリの版画作品「カサノヴァ」(1967年)や「シュルレアリスムの24のテーマ」(1977~1978年)なども披露。「保存」と同時に美術館の重要な役割の1つである「点検」についても注目しており、使用される道具や一連の流れも紹介されている。

美術館や学芸員の知られざる道具を公開

なお、諸橋近代美術館では、以前からYouTubeでもしばしば美術館の役割・学芸員の仕事に注目した動画を公開中。そちらも美術作品の「裏側」を知るうえで、非常に興味深い内容となっている。

 

 

■期間:
2023年7月15日(土)~11月12日(日)

■開催場所:
諸橋近代美術館
福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峯1093番23

■問い合わせ先:
公益財団法人諸橋近代美術館
url. https://dali.jp/

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