●Designer:川谷康久[川谷デザイン]
●Illustrator:千景
今回は書籍『龍ノ国幻想1 神欺く皇子/三川みり』(新潮文庫nex)のブックカバーのフォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、プロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
装飾的な文字で壮大な本格和風ファンタジーの世界観を表現
『龍ノ国幻想1 神欺く皇子』は、神の眷属(けんぞく)である龍が支配する国「龍ノ原」を舞台に、異端の皇子が命懸けの「噓」で新しい国を目指す男女逆転宮廷ファンタジー。
龍ノ原では、龍の声を聞く能力を持たずに生まれ女性は「遊子」と呼ばれて命を奪われる運命にある。遊子ゆえに殺された姉の復讐を果たして国の掟を変えるため、日織皇子は女性として生まれながらも身を偽って男として生き、皇位の座を目指すのだったが……。
表紙カバーでは、さまざまなバックストーリーを抱えたキャラクターたちによって織りなされる壮大なファンタジーの世界観が、美しく印象的なメインイラストや、その周囲の繊細なフレーム、装飾的で格調高いタイトル文字などで表現されている。
Font.01「パルレトロン B」
装飾的で華やかな書体を使いファンタジーの世界観を表現
シリーズタイトル名「龍ノ国幻想」部分の文字は、西洋レトロとゴスロリをテーマとして制作された「パルレトロン B」(フォントワークス)に。欧文書体のブラックレターを思わせる装飾的で華やかな雰囲気が作品の世界観にマッチしており、一目でファンタジー作品だと認識できるため選択された。
装画の背景のフレームは「龍」の文字とイラストを組み合わせて作られており、表紙カバーの繊細で幻想的な雰囲気が強調されている。デザイナーの川谷さんによると「シリーズタイトルで使用した『パルレトロン B』のデコラティブな作りにとても助けられています。本作は『新潮文庫nex』レーベルの作品ですが、このフレーム部分や背には特別に金の特色を使用しています。機会があれば、ぜひ書店でご覧ください」とのこと。
Font.02「筑紫Aオールド明朝 E」
質実剛健で格調高さと力強さを感じられる書体に
作品タイトルとそのルビ、著者名部分の文字は、のびやかで流麗な筆致が美しいオールドスタイルの明朝体「筑紫Aオールド明朝 E」(フォントワークス)に。デコラティブなシリーズタイトルとは逆に質実剛健で格調高さと力強さを感じられる書体にすることで、より印象深いデザインになるよう工夫されている。
Font.03「筑紫Aオールド明朝 R」
全体のバランスを意識して格調高い明朝体を選択
シリーズの巻数部分は、全体の統一感を意識して作品タイトルや著者名部分と同じフォントファミリー「筑紫Aオールド明朝」(フォントワークス)に。他の文字要素とのバランスを考えて、ウェイトは「E」より少し細い「R」が選択されている。
制作者プロフィール
- 川谷康久[川谷デザイン]
- デザイナー
- (かわたに・やすひさ) 島根県浜田市出身。2001年に独立後「川谷デザイン」を設立。コミックスや小説の装丁、雑誌の表紙デザインなどを行う。「マーガレットコミックス」「りぼんマスコットコミックス」「花とゆめコミックス」「新潮文庫nex」などのフォーマットデザインも手がける。https://kawatanidesign.jp/
2021.09.30 Thu