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テクノロジー

Adobe Illustratorの最新アップデートをチェック~デザインに使いやすくなった生成AIの機能の強化~

2024.08.08 Thu

Adobe Illustratorが2024年7月にバージョン28.6へとアップデートされました。今回の記事では、新たな追加機能や強化されたポイントを確認していきます。β版として実装された機能も多いですが、AIでのグラフィック生成をはじめ、便利な機能が盛りだくさんです。ここでは、その詳細を紹介していきます。

テキストからグラフィックを生成する機能の強化

今回のアップデートでは、生成AIのAdobe Fireflyの最新版を搭載して強化された機能・新機能が複数登場しました。ただし、現時点ではβ版としての提供となる機能も多く含まれています。

「生成ベクター(Beta)」は、自分がイメージするビジュアルを説明した簡単なテキスト(プロンプト)を入力することで、複数バリエーションのベクターグラフィックを自動生成できる機能です。最新バージョンでは生成されるグラフィックのクオリティが向上し、「効果」や「カラーとトーン」といったより詳細な設定もできるようになりました。

強化された「生成ベクター(Beta)」

また、これまで「テキストからベクター生成(Beta)」の一部として用意されていたパターンの生成機能は、別の独立した「生成パターン(Beta)」という機能となりました。

新しい「生成ベクター(Beta)」で選べるコンテンツの種類は「パターン」がなくなり、シーン・被写体・アイコンの3種となった

「生成パターン(Beta)」では、テキストのプロンプトからベクターパターンを生成できます。拡大・縮小などの編集も可能です。

独立した新機能として「生成パターン(Beta)」が登場

β版の新機能「生成塗りつぶし(シェイプ)」の追加

Adobe Firefly Vector 2 Modelを活用したまったくの新しい機能として「生成塗りつぶし(シェイプ)」も登場しています。この機能も現時点ではβ版です。

「生成塗りつぶし(シェイプ)」では、自分の作ったオリジナルのシェイプをもとにベクターグラフィックを作成できます。たとえば円を描いて「スイカ」というテキストのプロンプトで生成を行うと、元の円の形状やサイズをベースとしたスイカのグラフィックが作り出されます。

「生成塗りつぶし(シェイプ)」の活用イメージ

この機能は、レイアウトでテキストを配置するスペースをあらかじめ決めてから文字数を割り出す「先割り」のワークフローのように、“デザインの一部” として使うイラストを生成する際には非常に効果的です。

かなり便利な機能ですが、「誰もが難しく考えずにすぐに簡単に使いこなせる」というAIの最終的な理想形(あるいは “生成AI” と聞いて一般的に思い浮かべがちなもの)であるかと言えば、やや疑問は残ります。たとえば、四角いスイカを描きたいと考えたときに、四角形を作って「生成塗りつぶし(シェイプ)」で「スイカ」とだけ入力しても、ベースの四角の形状を無視した丸いスイカが生成されたり、“四角い背景の中に丸いスイカ” が作られたりもしました。

“四角いスイカ” の作成テスト。イメージに近い右側のグラフィックを得られたプロンプトは「四角いスイカ、塗りつぶし、背景なし」。ただし、同じプロンプトで背景込みのグラフィック(中央)も生成されている

試行錯誤の末、プロンプトの工夫で「イメージした通りの “四角いスイカ” 」のグラフィックを作成することは不可能ではありませんでしたが、やはり依然として “プロンプトの使いこなし方は重要” と言えるでしょう。まだβ版ということもあり、このあたりがどのように進化して、AIがどのくらいの柔軟性を備えることができるのかは引き続き注目です。

なお、「生成ベクター(Beta)」「生成ベクター(Beta)」も含め、これらの生成AI関連の機能は最新版ではコンテキストタスクバーからも素早く実行できます。

生成されたバリエーションを一元管理するパネル

最新バージョンには、「生成されたバリエーション」という専用のパネルも登場しました。ドキュメント上に「生成ベクター(Beta)」や「生成塗りつぶし(シェイプ)」で生成したバリエーションを1つのパネルで一元管理できます。

ドキュメント上の生成オブジェクト自体を削除しても、この「生成されたバリエーション」パネルからはバリエーションが削除されません。後から再びバリエーションを呼び出したり、「類似を生成」を実行したりできます。ただし「類似を生成」の機能は、「生成塗りつぶし(シェイプ)」で生成したバリエーションでは利用できません。

「生成されたバリエーション」パネル

パネル上に表示されたバリエーションは、個別に削除が可能です。また、このパネルの内容は、ヒストリーパネルとは異なり、ドキュメントを閉じて再び開いても維持されます。Illustratorをいったん終了しても消えてしまうことはありません。

「モックアップ(Beta)」などそのほかの主な強化

さらに今回のバージョンでは、β版の「モックアップ」機能も搭載されています。製品パッケージやアパレルなどのオブジェクトの表面にアートを配置し、高品質なビジュアルプロトタイプを簡単に作成するための機能です。オブジェクトの曲線やエッジに沿わせ、アートを自動的に変形させることができます。

ただし、「モックアップ」は本バージョンでテストおよびフィードバック用に利用できるようになった機能で、現時点では多くの制限事項もあります。Illustrator 28.5以前のバージョンで作成されたモックアップを「自分のモックアップ」に直接追加することもできません。

「モックアップ」や生成AIのツールは、機能の仕様が確立されれば複雑な作業の効率を大幅に向上できそうな機能

そのほか、アートワーク内の距離や角度などを測定して入力できる「寸法ツール」、画像内の欧文テキストのフォントを識別して活用できる「Retype」も正式に実装されました。新たに「長方形なげなわ選択」が追加されたり、「パンとズームツール」で3.13~64,000%までの非常に高速な拡大・縮小が可能になったりと、さまざまな改善も加えられています。

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Illustratorにも生成AI関連の機能が本格的に導入されるようになり、クリエイティブワークが大きく変化しようとしている時期であることが感じられます。とはいえ、今回のバージョンではβ版とされている機能も多く、操作性が向上している一方でより複雑さが増している点もあるため、ユーザーごとに賛否両論はありそうなバージョンアップです。

アドビ株式会社
URL:https://www.adobe.com/jp/
2024/08/08

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