• はてなブックマーク
  • RSS
  • Line

テクノロジー

デイシンが3万枚以上のAIアート画像を公開。”正負のプロンプトに同語指定”などの工夫が面白い

2023.09.28 Thu

独自の方法によるAIアートの例

3D印刷技術で透明シェードやそれを使ったLEDデザイン電球を製造・販売しているデイシン(Dasyn.com)が、同社の“AIアートブログ”で、画像生成AIを用いた3万枚以上の画像を公開した。デイシンは昨年12月に楽天でポスター500枚の販売を開始したが、今回新たにAIアートをもとにした約2,000枚のポスターの追加販売もスタート。一部はポストカードとしても販売されている。

デイシンでは、画像生成AIの「Stable Diffusion 2.1」を主に使用。その旧版のバージョン1.5や新版のXLを使って、独自の方法によりAIアートを作っている。ポスターやポストカードは、11月に東京ビッグサイトで開催されるデザインフェスタでも展示販売を予定。今後は画像付きのTシャツやマグカップなどの販売も計画されている。

この「3万枚以上の画像を公開」という内容がプレスリリースとして発表されたが、そこに含まれたAIによる画像生成の分析・解説が非常に興味深い。画像生成AIで“アート”を作り出すためには通常は細かいプロンプトが必要とされると思われがちだが、デイシンでは主に1〜3語ほどの短い言葉や造語を駆使して、AIの知識を生かしながら自由に画像を作らせているという。

デイシンの知見によると、画像生成AIは「実はリアルな画像を作るのには適していない」とのこと。抽象画のようなビジュアルこそ画像生成AIが得意とする分野であると考え、写真やアニメ画像のようなリアルさを重視する画像ではなく、絵画的な画像を中心に作らせているそうだ。

そのテクニックとして、画像生成のポイントに挙げられている1つの例が「正負のプロンプトへの同語指定」。「Stable Diffusion」では“正”のプロンプトと“負”のプロンプトの指定ができるが、ここで“正”のプロンプトに関係する言葉を“負”のプロンプトとして指定すると、短い言葉で多様な画像が生成されることを発見したという。

ピカビア(1879〜1953年)の名前を正負のプロンプトに同語指定して生成された画像の例

具体的には、例えば「表現主義(Expressionism)」のような芸術運動の名前を“正”のプロンプトに指定すると、通常はそのスタイルに近い絵を生成できる。だが、さらに同じ言葉を“負”のプロンプトにも指定すると、より多様な絵が得られる結果となる。

今回のプレスリリースでは、「シン表現主義(Shinexpressionism)」や「クレッショニズム(Cressionism)」という架空の芸術運動の名前を正負のプロンプトに指定することで生成された画像の例なども示された。

「シン表現主義」(左)や「クレッショニズム」(右)という架空の芸術運動の名前を正負のプロンプトに同語指定して生成された画像の例

そのほかのテクニックとして、「無限(infinity)」や「微分(differentiation)」といった数学用語や、それらの綴りを少し変えたものをプロンプトとして指定することで、面白い絵が生成されることも紹介されている。数学だけではなく、さまざまな科学技術用語などからも興味深いビジュアルが得られるという。

クリムト(1862〜1918年)やカンディンスキー(1903〜1916年)などの名前とともに「infinity」や「differentia」という言葉を使って生成された画像の例

そのほか、今回のデイシンの発表では、AIが生成する「コラージュ」「あいまいな景色や人」「キャットアート」についても触れられていた。そのうち「コラージュ」については、向きが比較的に揃ったケースとさまざまな画像が重なるケース、さらに切り抜いたような自由な形の画像が重なる場合があることを紹介。実際に生成された画像が提示されている。

画像生成AIによる「コラージュ」の紹介で示された画像の例

人々の身近なところへ急速に浸透した画像生成AIだが、それらを上手く使いこなす術については、まだまだこれからノウハウが蓄積されていく段階だ。今回のテイシンの実験的な発表は、1つの参考になる貴重な情報と考えられるだろう。

Dasyn.com
URL:https://3d-dl.com/
2023/09/28

テクノロジーの他の記事

一覧を見る

読込中...

逆引き辞典逆引き辞典