東洋医学の治療法の中でも、一般的に知られている「お灸」。鍼灸院などでプロに施術してもらうこともありますが、セルフケアとして簡単に使えるお灸も豊富で、仕事でがんばり過ぎたときなど気軽なリフレッシュ方法としても活用できます。
そこで今回は入門編として、お灸に初めて挑戦する人に知ってほしい基礎知識やおすすめの使い方をご紹介。東洋医学を教えてくれるのは、鍼灸院「アキュサリュート高輪」の院長・瀬尾港二先生。イラストは、お笑いコンビ蛙亭の中野周平さんです。
もぐさから作られるお灸はどんなもの?
瀬尾 体内の「気」の通り道である「経絡」。その「経絡」の体表面にある反応点・作用点である「経穴」がいわゆる「ツボ」のこと。ツボをピンポイントに刺激して気血を流し、不調を緩和するのが東洋医学の治療方法です。ツボを刺激する方法としては、「手で直に押す」「鍼で刺激を与える」「お灸で熱刺激を加える」などがあります。今回はこの中から「お灸」についてご紹介していきます。
お灸は、よもぎの葉の裏にある綿毛を精製した「もぐさ」からできています。体に熱刺激を与えるための燃焼温度がほどよいのが特徴。よもぎの薬効のほか、香りによるリラックス効果も期待できます。温めることで気血が流れやすくなるので、体が冷えているときの治療には鍼よりもお灸がいい場合もあります。また、鍼のように細くはないため、ツボを広く捉えられ、ご自宅で行うセルフケアとして日常に取り入れやすいです。
使いやすい台座灸など、お灸の種類
お灸の形状
瀬尾 現代のお灸は、適量のもぐさを詰めた小さな円柱に台座がついた「台座灸」がベーシック。台座の部分がシール状になっているものも多く、ツボに固定して使いやすくなっています。自宅でも扱いやすいよう、火を使わないものや煙が出ないものも増えています。
お灸のバリエーション
- 棒灸(ぼうきゅう)
・もぐさを和紙で巻いて棒状にしたお灸
・煙が多いが、熱のコントロールがしやすい
- 隔物灸(かくぶつきゅう)
・もぐさと肌の間に物を挟んで燃やす方法。
・もぐさの薬効だけでなく、挟んだものの効能も期待できる
■にんにく灸:にんにくを薄く切り、その上にもぐさを置いて火をつける
■生姜灸:生姜を薄く切ってその上にもぐさを置いて火をつける
■味噌灸:味噌をからだの表面に塗った上にもぐさを置いて火をつける
- 台座灸(だいざきゅう)
・もぐさの下に薄い台座とシールがついており、ツボに固定することができる
・一般流通しているのは主にこのタイプ。ドラッグストアなどでも手に入りやすい
■にんにく灸:もぐさに線香状のにんにくを巻き込んだもの。温熱レベルが高め。
■アロマ灸:アロマの香りを楽しめる
- 瀬尾港二
- アキュサリュート高輪院長
- 1960年宮崎生まれ。ICU理学科卒業後、北京中医学院(現北京中医薬大学)針灸推拿学部に入学。在学中から気功や武術の大家に師事。92年卒業。2010年にアキュサリュート高輪を開設。一般社団法人日本中医薬学会理事・事務局長、神奈川衛生学園専門学校非常勤講師、東京医科歯科大学非常勤講師。著書に「図解 よくわかる東洋医学―漢方薬・ツボ・食事、3つの養生法で治す」「家庭でできる漢方〈4〉不眠症―原因・タイプ別 眠れるからだに体質改善!」など。
2024.01.26 Fri2024.03.15 Fri