「HTML 5が開くWebアプリケーションの隆盛──前編」 by. 小川 浩
「HTML 5が開くWebアプリケーションの隆盛──前編」
2009年10月13日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
Googleが発表したiPhone用乗換案内のWebアプリの衝撃
2009年10月5日、Googleが発表したiPhone用Googleマップの乗換案内サービスは、App Store経由でダウンロードするものではなく、Safari上で動く、純然たるWebアプリなのだが、その動きたるやネイティブのクライアントアプリに匹敵する素晴らしいものだった。
マスメディア的にはあまり大きく取り上げられることはなかったこのアプリだが、実はWeb2.0のムーブメントから始まった、すべてのアプリケーションがWeb上に置かれていくという流れがいよいよiPhoneにも達しつつあることを示す、非常にエポックメイキングな事件であったと筆者は考えている。
アクセス方法は、iPhoneのSafariでgoogle.co.jpへ。画面右上の「その他」から「乗換案内」を選ぶだけだ
Googleの発表によると、このWebアプリは
・乗換案内と運転経路案内をワンタッチで切り替え
・シンプルかつパワフルな乗換案内のUI
・最近使った駅をタップするだけで選べる、履歴機能
・現在地機能をサポート。目的地を入れるだけで検索可能
・地図としての機能も充実。マップの検索や、航空写真、現在地確認も可能
とある。
HTML5によるWebの逆襲
Flashを使えないiPhoneでは、リッチなインターフェイスを持つWebサービスはJavaScriptに頼るしかないが、JavaScriptの常駐はブラウザ側のメモリ負担が大きく、iPhoneのひ弱な環境では、それほどリッチな動きを実行させることはできないと思われていた。
しかし、Googleマップはあっさりとこの制限を超えてしまったように思う。これを実現しているのは、Safariをはじめとする次世代ブラウザのほとんどがサポートしているHTML 5に依るところが大きい(ほとんどというのは、IE8がサポートしていないからだ)。
HTML 5は、W3CがHTML 4に代わる次世代のHTMLとして策定を進めているHTML仕様だ。たとえば、これまでHTML上で図を表現するためには、GIFやJPEGといった画像フォーマットによるしかなく、グラフィカルな動きをさせようと思えばFlashやJavaアプレットを使うしかなかった。しかし、HTML 5では、Canvasと呼ばれる、ブラウザ上に図を描くために策定された仕様があり、FlashやJavaのようなプラグインを使わずに、JavaScriptで図を描くことができるのだ。
次回はこのCanvasについてくわしく触れてみたい。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。