第8回 Phase4 制作物の成否を見極める検収作業 - 思考するWebディレクション | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第8回 Phase4 制作物の成否を見極める検収作業 - 思考するWebディレクション

2024.9.19 THU

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Phase 4 制作物の成否を見極める検収作業

検収とはとにかく
見逃さないことである

前述した指示出しのあとは、納品に向けてクリエイターから上がってきた制作物をチェックする段階へと移行する。これを「検収」と呼ぶ。検収作業においてもっとも重要なのは、とにかく抜けやミスを見逃さないということに尽きる【5】。
たとえば、工場の生産ラインでは複数の同一アイテムの完成度を比較し、差異がないかどうかを検品することが検収のポイントになる。しかし、Webサイトにおける検収の意味合いはそれとは真逆のものになる。Webサイトは、Webディレクターとクライアントとのやりとりで組み上げたプランをクリエイターが表現し、制作する。つまり、ほかにないオリジナルのものを生み出すことがWebサイト制作の目的である。検収においては同一の比較対象が存在しない【6】。Webディレクターが検収をするうえで押さえておくべきことは「指示どおりのものが正しくでき上がっているどうか」、そして「それをクライアントが納得したうえで納品、公開できているかどうか」の2点だ。比較できるものがない以上、仕様書や発注書を参考にすることになるが、成果物と一緒にクリエイター側からそういった書類が回ってくることはほとんどない。このような決まり事がないのはWeb自体の歴史が浅く、書式が文化として根付いてないことが理由だ。つまり、Webサイト制作案件の検収は、Webディレクターによる目利きの部分に大きく依存している、というのが現状だ。検収の段階で問題を発見し、対処して解決できなければ、さらに大きな問題に発展しかねない。Webディレクターとして現場についているからにはよく注意をして、“見逃さない”検収を徹底しよう。

クリエイターが
嫌がる修正指示

では、検収時に問題を発見したとして、円滑に修正作業を行うためにはどうすればよいか。筆者の扱う案件にかかわるクリエイターは全国各地におり、さらに個々のスキルの幅も広いため、それぞれの検収は電話やメールを中心に行う。目に見えておかしな動作や、明らかな抜けであれば簡単に指摘できる。しかし、細かな指摘が複数出てくると、指示をする側も受ける側もその管理に手間取ることになる。二度手間を防ぐために「検収チェックシート」という書類を用意して、効率的に検収を徹底する手法もある。この手法は修正事項をタスク化することに意味がある。チェックシートは修正指示を受けたクリエイターにとって、修正作業時にはToDoリストになり、作業完了時にはチェックシートとして機能する。また、修正データが戻ってきた際には、ディレクターが行う確認機能も兼ねているので制作物のミスや抜け、勘違いが発生しにくくなる【7】。

信頼したうえで
疑うということ

修正作業は割り当てと指示、情報共有がうまく行われていれば確実に減らせる。そのためには、お互いを信頼したうえで疑うということも必要になってくる。案件のクオリティをクライアントから預かるプロのWebディレクターとして、けっして恥ずかしくない目線と姿勢を心がけたい。

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【5】検収においてもっとも重要なポイントは見逃さないということ

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【6】オリジナルの制作物であるWebサイトには、検収の際の同一比較対象が存在しない

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【7】「検収チェックシート」は検収時の修正事項をタスク化することに意味がある。
修正指示を受けたクリエイターの備忘録として、修正作業時にはToDoリストとして、
作業完了時にはチェックシートとして機能する

Column Webディレクターのアイデアを広げるワンポイントコラム

【ディレクターが心得るべき感情のコントロール】

人と人が共同で事に当たる以上、Web制作の現場でも感情のぶつかり合いが生じることは珍しくない。また、そのためコミュニケーションに支障が出て、制作物のクオリティに影響することもある。これはWeb制作の現場に限らず、人間同士であれば必ず生じる問題なので、どう解決すべきかということは一概には説明できない。しかし、案件の舵取りであるWebディレクターはそうした環境にあってもつねに冷静沈着でいられることが望ましい。感情に左右されずに、あらゆる場面で落ち着いて物事に向き合うことは難しい。私的な感情をそのまま表面に出さずに、上手にコントロールすることを心がけよう。相手が抱く感情を察知して、それがもたらす状況を把握し、必要とされる自らの感情を選んで表現する。感情的な状態や場面においては、冷静沈着な人だと思われることが望ましいのではなく、場の状況に合わせて感情を制御し管理することが大切になる。感情も指示要因のひとつになることを覚えておこう。

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