Appleが、2024年5月15日(水)に新しい「iPad Pro」の販売を開始します。最新のM4チップを搭載した機種です。13インチと11インチの2サイズでの展開で、Apple Storeアプリでの注文受付は既に開始されています。
驚きの薄さと軽さが実現された筐体
今回発表された新しい「iPad Pro」は、Apple史上で「最高に薄い」デザインが特徴です。11インチ機は2022年に発売された第4世代モデルが5.9mmの厚さでしたが、新登場の第5世代モデルの厚みは5.3mmとなりました。驚くべきことに、新しい13インチiPad Proの厚さはそれよりもさらに薄い5.1mmです。両モデルともに、重さも前世代モデルと比べて軽くなっています。
前世代モデルも含めた本体サイズ・重量の比較 | ||||
モデル | 世代 | 発売年 | 本体サイズ(幅×高さ×奥行) | 重量(Wi-Fi機) |
iPad Pro 13インチ | 第1世代 | 2024年 | 215.5×281.6×5.1mm | 579g |
iPad Pro 12.9インチ | 第6世代 | 2022年 | 214.9×280.6×6.4mm | 682g |
iPad Pro 11インチ | 第5世代 | 2024年 | 177.5×249.7×5.3mm | 444g |
iPad Pro 11インチ | 第4世代 | 2022年 | 178.5×247.6×5.9mm | 466g |
※赤字は今回発売された新モデル
新しいiPad Proの本体カラーバリエーションは、シルバーとスペースブラックの2色での展開です。価格は11インチが168,800円〜(税込)、13インチが218,800円〜(税込)となっています。ストレージ容量は2TB/1TB/512GB/256GBから選択でき、128GBモデルは用意されませんでした。筐体は100%再生アルミニウム製で、持ち運びに便利なコンパクトさでありながらも前世代と同じ強度を備えています。
Thunderbolt 3/USB 4インターフェイスは従来機から踏襲され、最大40Gbpsの高速な有線接続を利用できます。ワイヤレスでの通信はWi-Fi 6Eおよび5G接続(Wi-Fi+Cellularモデルのみ)に対応し、eSIMのみのサポートで物理的なSIMカードの使用には対応していません。
新たに発表されたM4チップを実装
本製品の性能面での最も大きなトピックは、新開発のSoC(システムオンチップ)である「M4チップ」が採用されたことです。
「M4チップ」は、第2世代の3ナノメートルテクノロジーを使って設計されました。最大10コアのCPU(4つの高性能コア×6つの高効率コア)と最大10コアのGPUを搭載し、パフォーマンスや電力効率がさらに向上しています。
※新型「iPad Pro」の256GB/512GBモデルのCPUは9コア(3つの高性能コア×6つの高効率コア)
その性能について、同社のプレスリリースでは「前世代のiPad ProのM2チップよりも最大1.5倍高速なCPUパフォーマンス」「Octaneなどのアプリでのプロ向けのレンダリングパフォーマンスが大幅に向上してM2チップよりも最大4倍高速」などと紹介されています。
Neural Engineも「これまでで最もパワフル」となり、毎秒38兆回の演算処理が実現されました。A11 Bionicで初めて搭載されたNeural Engineと比べると、60倍の速さです。リアルタイム音声のキャプションに対応する「ライブキャプション」や、被写体を識別する「画像を調べる」といったAI機能をより素早く実行できます。
電力効率の向上も、ユーザーにとっては利便性に直結するポイントです。全体的なスペックが上がっているものの、バッテリー使用時間は前世代の機種と同じで、最大10時間のWi-Fiでのインターネット利用/ビデオ再生が実現されています。Wi-Fi+Cellularモデルでの携帯電話データネットワークでのインターネット利用も、前世代と変わらずに最大9時間です。
タンデムOLEDで強化されたディスプレイ
画面には「タンデムOLEDテクノロジー」を搭載したUltra Retina XDRディスプレイが採用されました。「タンデムOLED」は、2枚のOLEDパネルを用いて両方からの光を組み合わせる技術です。SDRとHDRのコンテンツで1,000ニトのフルスクリーン輝度に対応し、HDRでのピーク輝度は1,600ニトに達しています。
この画面性能を支えているのがM4チップに搭載された新しいディスプレイエンジンです。「タンデムOLEDテクノロジー」は、ピクセル1つずつの色と輝度の “サブミリ秒単位でのコントロール” を可能にし、色精度の高さや輝度の均一性にも貢献します。
解像度 | 11インチ:2,420×1,668pixels(264ppi) 13インチ:2,752×2,064pixels(264ppi) |
コントラスト比 | 2,000,000:1 |
SDR輝度 | 最大1,000ニト |
XDR輝度 | 最大1,000ニト(フルスクリーン) ピーク輝度1,600ニト(HDRコンテンツのみ) |
色域など | 広色域(P3)、True Tone、 耐指紋性撥油コーティング、フルラミネーション、反射防止コーティング |
また、特にプロのユーザーに向けて、新しいNano-textureガラスのオプションもiPad Proで初めて導入されました。“ナノメートル単位の精度でのエッチング” が施され、画質とコントラストを保ちながら周囲の光を拡散させて、画面への映り込みを抑えることができます。
Nano-textureガラスのオプションは、いずれのサイズのモデルでも、ストレージ容量2TBもしくは1TBの構成でのみ選択が可能です。標準ガラスの場合の価格と比べ、16,000円の追加で利用できます。
前面カメラは “横置き” に最適な位置へ変更
新しい「iPad Pro」では、カメラシステムもアップデートされました。背面カメラ(広角:F1.8絞り値)/前面カメラ(超広角:F2.4絞り値)ともに12MPで、数値的な面での大きな強化はなく、汎用性が高まりました。大きなポイントとなる変更として、新型モデルでの前面カメラ(TrueDepthカメラ)の位置は、本体の上側(短辺側)ではなく、横方向(長辺側)に設置されています。
これは、本体を横向きにしてビデオ会議などで使いやすくするための配慮です。それとあわせて被写体を追尾してフレーム内に収めるセンターフレーム機能にも対応しています。
本製品では、新しいアダプティブTrue Toneフラッシュも採用されています。特に、書類のスキャンなどに効果を発揮するようです。カメラアプリでAIによって書類を自動的に識別し、影が写り込むような場合にはアダプティブフラッシュで複数の写真を撮影し、スキャンをつなぎ合わせてキレイな画像を得られる例が紹介されています。
“Pro” の名前が付いた新しい「Apple Pencil」
本体の刷新とともに、クリエイターにとって特に注目なのが、同時に発表された「Apple Pencil Pro」です。独自の触覚エンジンなどを搭載したデバイスで、Apple Pencilでは初めて「探す」機能にも対応しました。「iPad Pro」には側面にマグネットでくっつけることができ、保管/充電/ペアリングができます。
新型の「iPad Pro」に専用で設計された新しい「Magic Keyboard」や「Smart Folio」も発表されました。「Magic Keyboard」には、スペースブラック本体用のブラック色モデルと、シルバー本体用のホワイト色モデルがあります。アルミニウム製のパームレストや大型のトラックパッドを備え、マグネットでの取り付けが可能です。
「Smart Folio」もマグネットで設置でき、ブラック/ホワイト/デニムの3色展開です。「iPad Pro」の前面と背面を保護しつつ、複数の表示角度に対応したスタンド機能も備え、カバーをめくったり閉じたりして本体のスマートなスリープと自動復帰ができます。
上記のアクセサリの価格は「Apple Pencil Pro」が21,800円(税込)、「Magic Keyboard」の13インチ用が各59,800円(税込)で11インチ用が各49,800円(税込)、「Smart Folio」の13インチ用が各17,800円(税込)で11インチ用が各13,800円(税込)です。
M4チップの性能が発揮されるアプリも続々登場予定
今回の「iPad Pro」の発表では、2024年5月13日(月)から提供が開始される音楽制作ソフト「Logic Pro 2(iPad用)」や、今春後半の登場が予定されている動画編集ソフト「Final Cut Pro 2(iPad用)」についても紹介されました。いずれもAI関連の機能が強化され、M4チップを搭載した新しい「iPad Pro」の強力なNeural Engineが効果を発揮します。
「Logic Pro」には、音楽制作のさまざまなプロセスを補強するスタジオアシスタント機能が搭載されました。1つのミックスされたオーディオ録音からドラム/ベース/ボーカル/そのほかの音源という4つのパートを抽出できる「Stem Splitter」、真空管やテープのような温かみをトラックに加えられる「ChromaGlow」などが含まれます。AIが重要な音楽生成機能の「Session Players」では、「Drummer」を進化させ、新たにBass PlayerとKeyboard Playerが収録されています。
新バージョンのiPad向けの「Final Cut Pro」では、1度に複数のアングルを撮影できるライブマルチカム機能が提供されます。1つの場所で最大で4台のカメラを接続してプレビューが可能です。M4チップを搭載した「iPad Pro」と新しい「Final Cut Pro 2(iPad用)」の組み合わせでは、「シーン除去マスク」によって、4Kビデオ全体で1回タップするだけで背景と被写体の分離も簡単に行えることが紹介されています。
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今回の「iPad Pro」は、最新のM4チップの搭載はもちろん、本体が薄くなったことで大きく「変わった」と感じさせてくれる製品です。特に11インチよりも薄い13インチモデルは、従来の一般的な「上位機であれば厚みが増すのは仕方ない」という概念を覆すような意欲的なモデルと言えるでしょう。クリエイターにとっては注目の機種ですが、決して「安い」とは言えない製品であるため、予算などとも十分に照らし合わせながら購入・買い替えを検討してみると良いでしょう。
Apple
価格:
「11インチiPad Pro(Wi-Fi)」168,800円〜(税込)
「11インチiPad Pro(Wi-Fi+Cellular)」204,800円〜(税込)
「13インチiPad Pro(Wi-Fi)」218,800円〜(税込)
「13インチiPad Pro(Wi-Fi+Cellular)」254,800円〜(税込)
URL:https://www.apple.com/jp/
2024/05/08